講演する渡辺氏
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3Dプリンターで自作した「内視鏡先端の洗浄装置」
3Dプリンターで自作した「内視鏡先端の洗浄装置」
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 「これは便利だと思ったので、製品化しませんかってメーカーに提案したんですよ。でも数が出ないから、と断られた。ならば自分達で3Dプリンターで作ったやつでいいやと思って、それを使い続けてます」――。

 自治医科大学 脳神経外科 教授の渡辺英寿氏がこう話すのは、3Dプリンターで自作した、マカロニのような形状をした小型の手術器具。硬性内視鏡の挿入部にこれをはめて水を通すと、水が挿入部を伝って流れ、挿入部の先端まで綺麗に洗える。内視鏡を患者の体内から引き抜いては洗う、という面倒な作業を不要にする優れものだ。

 3Dプリンターで患者の臓器モデルを作製し、術前のシミュレーションや手術中の戦略検討などに活用する。今や、少なからぬ臨床現場でそうした取り組みが行われている。「第90回 日本医療機器学会大会」(2015年5月28~30日、パシフィコ横浜)では「“医療機器”としての3Dプリンターの活用――その現状と将来――」と題するシンポジウムが開催された。こうした企画そのものが、医療現場への3Dプリンターの浸透ぶりを示すものだ。

 ただし渡辺氏のグループほど徹底的に、3Dプリンターを“使い倒し”ている現場は少ないだろう。今回のシンポジウムでも「3Dプリンターを導入してはみたものの、数回使っておしまいというケースは少なくない」との声が、パネルディスカッションの登壇者からあがった。