システム概要と3社の業務分担(出所:日立造船、提供:九電みらいエナジー)
システム概要と3社の業務分担(出所:日立造船、提供:九電みらいエナジー)
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納入した水素製造システム(出所:日立造船)
納入した水素製造システム(出所:日立造船)
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 日立造船は5月18日、再生可能エネルギーを利用した水素ステーション向けに、水素製造システム「ハイドロスプリング」を納入したと発表した。固体高分子型水電解方式を採用し、1時間に1Nm3の製造能力を持つ。九州大学が実施する「グリーンアジア国際戦略総合特区」での「スマート燃料電池社会実証」に活用する。3月30日に納入した。

 太陽光や風力発電など出力の変動する再エネの電力によって水素を製造し、得られた水素を貯蔵することでエネルギー供給を平準化する。

 今回の実証では、燃料電池車(FCV)に水素を供給するステーションに再エネ由来の水素を供給し、試験的に運用する。水素ステーションは、九州大学の伊都キャンパス内に設置する。実証では、12kWの太陽光発電などを活用して水素を製造する。

 同システムは、日立造船と大陽日酸、九電みらいエナジー(福岡市中央区)が共同受注した。3社が共同で水素製造システム一式の設計から製造、設置、試運転までを担当した。そのうち、日立造船が水素製造装置の設計と製造を担った。

 九州大学は、燃料電池を核とした水素社会の実現を目指し、次世代燃料電池として期待される固体酸化物形燃料電池(SOFC)や、水素を活用した太陽光や風力など再エネの利用に向けた社会実証に取り組んでいる。

 日立造船は、2005年に三重大学の農場で、水素製造装置と風力発電との連携試験を実施した実績がある。実用的な用途を目的とする装置としては、今回が初納入となる。

 また同社は、再エネで水を電気分解し、生成した水素をCO2と反応させメタンガス化する技術開発も手掛けている。今後も水素利用の研究開発を進め、再エネ活用における余剰電力の有効利用などに取り組むという。