記者会見の様子
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 FiNC、日本交通、吉野家ホールディングス、リンクアンドモチベーションの4社は2015年5月18日、「ウェルネス経営」と「CWO(Chief Wellnes Officer、最高健康責任者)」制度を導入することを発表し、共同記者会見を開催した。

 ウェルネス経営は、経営の柱の一つとして従業員の健康を重視する経営方法。健康を促進することで従業員の休職や医療コストを抑制し、モチベーションを高めて業務改善を目指す。CWOはその推進役となり、COO(最高執行責任者)やCTO(最高技術責任者)などと同列の立ち位置で従業員の健康について責任を負う。スマートフォンのアプリを利用した生活習慣改善サービスなどを提供するFiNCが提唱し、日本交通、吉野家ホールディングス、リンクアンドモチベーションの3社が賛同した。

 登壇したFiNC 代表取締役の溝口勇児氏は「従業員こそが最も大切な経営資源」と強調。現状、会社にとって不調者の急増、労働人口の減少、国民医療費の増大、高齢従業員比率の増加が大きな問題になっていると指摘した。従業員の健康状態が悪いと生産性や業績が落ち、評価の低下や人間関係の悪化を招く。それが休職、離職の原因になり、企業全体の生産性の低下につながるという。

 一方で従業員が健康でモチベーションを高く維持できると生産性が向上し、企業の社会的評価も高まる。FiNCのCWOに就任した坂本奈央氏は、「企業にとって、ウェルネスを福利厚生と考えるならコストだが、人材育成と考えるなら投資と言える」と語った。

 FiNCのサービスの販売パートナーでもあるリンクアンドモチベーション 代表取締役社長の小笹芳央氏は、戦後日本の労働の変化について指摘した。同社グループは「モチベーションエンジニアリング」を基軸に社員のモチベーションをマネジメントするサービスを提供している。

 戦後間もない頃は、「エンゲル係数」(家計の支出に占める食費の割合)が60%を超え、多くの人は食べていくために働いていた。しかし近代化に伴い数値は下がり、1980年代後半には25%を下回った。すると人々の仕事に対する意識も変わり、食べるためだけではなく誰かのために働きたい、誰かに認めてもらいたいといった欲求が大きくなってきたと分析した。同時に、働くモチベーションの多様化も生んだという。

 日本のGDPに占める第3次産業(サービス業)の割合が増えていること、商品のライフサイクルが短くなっていること、人材の流動化が進んでいることなどから、企業が競争で優位になるためには従業員のモチベーションやホスピタリティーなど人的資源に関連する部分の重要度が増している。そのため企業は人材を確保すると共に従業員のモチベーションを高く保たないと成果を伸ばせない、つまりウェルネス経営が今後より重要になっていくと語った。