開発した変換効率22.1%の太陽電池セル(黒い部分)。セルの面積は9cm<sup>2</sup>。(写真:Aalto University)
開発した変換効率22.1%の太陽電池セル(黒い部分)。セルの面積は9cm<sup>2</sup>。(写真:Aalto University)
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 フィンランドAalto UniversityとスペインUniversitat Politecnica de Catalunyaの研究者は、変換効率が22.1%と高い太陽電池セルを開発した。いわゆる「Black Silicon」技術で実現したという。論文を学術誌の「Nature Nanotechnology」に発表した。変換効率の値は、ドイツFraunhofer ISE CalLab.が認定した。まだ研究開発水準の技術だが、パナソニック、シャープ、そして米Sunpower社に続いて、変換効率20%を大きく超える開発例が増えてきた。

 Aalto Universityらが開発しているBlack Silicon技術は、(1)表面を長さ0.8μm前後の剣山状に加工して反射を大幅に減らす、(2)裏面電極型、(3)セルの表と裏に再結合防止膜(passivation膜)を形成して、電子と正孔のキャリア再結合を低減する、といった技術である。

 Aalto Universityなどは同技術を2012年頃から開発してきた。2012年10月時点の変換効率は18.2%だったが、2013年4月には同18.7%を達成。今回はそこから3ポイント超高い22.1%を実現した。今回の太陽電池セルの面積は9cm2と比較的大きい。

 今回、変換効率が大きく向上したのは、セル表面の再結合防止膜として、原子層堆積(atomic layer deposition:ALD)法で酸化アルミニウム(Al2O3)層を形成し、さらにその層の厚みなどを最適化して、キャリア再結合を大きく低減したことによるという。今回は、厚み20nmのAl2O3層を用いた。

高緯度地方でもよく発電

 この太陽電池表面の可視光の反射率は、表面加工技術のおかげで、波長500~800nmではほぼ0.5%以下と低い。Aalto Universityでこの技術の開発にあたったProfessorのHele Savin氏は、Black Silicon技術に基づく太陽電池はフィンランドなど高緯度地方での利用に非常に向いているとする。高緯度地方は、太陽の高度が低いが、表面加工技術によって、低い角度からの入射光でも反射されにくく、より有効に利用できるからだ。論文によれば、定格の変換効率が同じ一般的な太陽電池に対して、1日で3%発電量が多いという。

 ちなみに、シャープは2014年3月にBlack Silicon技術に似た技術を用いた、1.9cm角(3.6cm2)の太陽電池セル「BLACKSOLAR」で、変換効率25.1%を達成している(関連記事)。2015年4月に同社が発売した、BLACKSOLAR技術を利用したパネル製品の変換効率は19.1%だった。