太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの不安定な出力を安定化するために、エネルギーを一時的に蓄える蓄エネ装置に注目が集まっている。その1つが、エネルギーを熱で蓄える「蓄熱システム」である。

 日本では蓄熱といえば冷暖房用途が中心だが、米国やスペインでは大量の鏡で太陽光を集めて熱を蓄える蓄熱システムの存在感が高まっている。電力が必要なときに熱を取り出し、熱交換器で蒸気を発生させて、タービンを駆動して発電する。米国における蓄熱システムの設置容量は、揚水発電所に次ぐ規模となっており、2015年には倍増する勢いだ。

ヒートポンプを活用

 再生可能エネルギーの導入拡大を目指すドイツでも、蓄熱システムの開発が加速し始めた。ドイツ航空宇宙センター(DLR:Deutschen Zentrums für Luft- und Raumfahrt)が、ヒートポンプを使った蓄熱システムを開発している(図1)。

図1 ドイツDLRのヒートポンプを利用した風力・太陽光安定化システム(イラスト:DLR)

 DLRの蓄熱システムは、太陽光発電や風力発電で発電した電力でヒートポンプを駆動することで、電力を100℃程度の熱に変換して蓄熱するシステムである。水などの安価な蓄熱材を利用できるため蓄熱コストが極めて安い。ヒートポンプを利用するため入力電力の4倍程度の熱量を生み出すことができる。

 ヒートポンプで生み出した100℃程度の熱は、必要に応じてバイナリー発電で電力に変換する。その際の熱電変換効率は10%程度になる。電力を熱に換えて蓄え、再び電力に変換するまでの熱サイクル効率は、(当初の電力)×(4倍の熱量)×(熱電変換効率10%)=40%となる。これは、500℃を超える蒸気タービン発電と同等の効率だ。蒸気タービンではそもそもこの様な低温は利用できないのに対して大きなアドバンテージである。蓄電池の入出力効率70%と比べると低いものの、熱を蓄える蓄熱材料に水を利用すれば、蓄電池よりも安価に蓄熱システムを構築できる。