産業技術総合研究所・太陽光発電研究センター 評価・標準チームによって計測されたペロブスカイト太陽電池の電流-電圧特性(出所:物質・材料研究機構)
産業技術総合研究所・太陽光発電研究センター 評価・標準チームによって計測されたペロブスカイト太陽電池の電流-電圧特性(出所:物質・材料研究機構)
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 国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)は5月1日、「ペロブスカイト太陽電池」のエネルギー変換効率において、世界で初めて国際標準試験機関で記録が公認され、変換効率15%を達成した、と発表した。太陽光発電材料ユニットの韓礼元ユニット長をはじめとする研究グループの成果。

 「ペロブスカイト太陽電池」は、ハライド系有機・無機ペロブスカイト半導体(CH3NH3PbI3)を光吸収材料に採用した太陽光発電素子で、2009年に初めて太陽電池材料として報告されて以来、急速に変換効率が向上し、次世代太陽電池として世界中で注目されている。基板やフィルムに塗布して作製できるため、印刷技術で量産することで、従来の太陽電池に比べて製造コストが大幅に下がる可能性を秘めている。

 ただ、これまで、報道されたペロブスカイト太陽電池の変換効率は、ほとんどが小さな面積のセル(約0.1cm2)で得られたものだった。これまでに、効率20.1%(セル面積0.0955cm2)が報告されているが、セル面積が小さいために測定の誤差が大きく、また、測定方法も未公開だった。信頼性を有するデータに基づくペロブスカイト太陽電池の発展には、国際標準試験機関での公認エネルギー変換効率を得ることが急務となっていた。

 NIMSの研究グループは、発電層に使用されているペロブスカイトの塗布方法を改良することで、表面の凹凸を制御して変換効率とその再現性を向上させた。また、電荷(キャリア)を輸送する層の材料について、従来は吸湿性が高くすぐに変換効率が低下していたが、新たに吸湿性が低くキャリア移動度の高い材料を開発することで安定性の改善に成功した。これらの成果をもとに、太陽電池セル面積を1cm角以上に拡大し、さらに、デバイスの作製方法を改良することで、ペロブスカイト太陽電池として世界で初めて国際的な標準試験機関(産業技術総合研究所・太陽光発電研究センター評価・標準チーム)にて公認変換効率15%を実現した。

 今後は、この成果をベースに、さらなる高性能キャリア輸送材料を開発すると共に、ペロブスカイト太陽電池の界面を制御することによって、より高い変換効率を目指すという。