シャープが2015年4月9~10日に中国・深センで開催した「シャープ電子デバイス展示紹介会」(関連記事1関連記事2関連記事3)の目的は、中国現地の顧客を獲得するための商品展示にとどまらなかった。中国メディアに向けた発表会および中国政府関係者や業界関係者との交流、さらには日本のメディアへの積極的な対応があった。事業再建に関して様々な噂が飛び交う中で、大きな市場である中国現地とのパイプを強めるだけでなく、広く情報発信をしながら、市場に食い込もうとするシャープの姿勢を強く感じた。

方志専務が語ったイベントの成果と事業再建

 今回の展示紹介会の責任者である同社 代表取締役 専務執行役員 デバイスビジネスグループ担当の方志教和氏は、中国政府関係者や業界関係者との交流、メディア対応など様々な形で中国現地とのパイプ作りや情報発信に努めた。2日間の展示の最後には、日本からのメディアを対象にしたラウンドテーブルを用意し、今回のイベントの成果や事業再建に関する質問に答えた。

目玉はフリードローイング、4K、インセル

 今回の展示でシャープが強調したのが、この3つだった。4Kは、テレビから既にパソコンまで市場が広がっている。スマートフォン(以下、スマホ)では、まだすぐに必須になるものではないが、技術要求があることから、今回の展示に至った。

 インセルは、出遅れたことを正直に認めた。インセルの技術は持っていたが、供給先メーカーとの契約の制約もあり、2014年夏ごろはまだ「インセルは必要ない」という判断であった。しかし、同年秋ごろから急にユーザーがインセルの採用へと動き出し、WQHDのハイエンドから開発に入った。しかし、様々な課題があり、また台湾のタッチパネルメーカーのWintech社が破産した影響を受けて、結果的に後手に回ってしまったという。

 今後のパネル価格については、「インセルを意識した価格に引っ張られる」とシャープは予想しているが、まだインセルの技術を持っていない中国パネルメーカーがどのような戦略を取ってくるかによっても影響を受ける。低温多結晶Si(LTPS)技術を持つ中国パネルメーカーでも、歩留まりはまだ高いとはいえず、すぐにインセルパネルを出荷できる状況ではない。