モデルマウスの腸間膜上にある微小がんが緑色に光っている
モデルマウスの腸間膜上にある微小がんが緑色に光っている
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マウスで転移がんの検出と切除に成功

 検証実験では、さまざまなタイプの卵巣がん細胞を腹腔に転移させたモデルマウスにこの試薬を投与。1mm以下の微小ながんを高精度に検出できた。加えて、gGlu-HMRGでは検出が難しいタイプを含む、多種類のがん細胞を検出できた。蛍光は非常に明るく、肉眼での観察が可能だったという。生きているモデルマウスの腹腔内微小がんを蛍光内視鏡で検出し、試薬の蛍光を目印とするがんの切除にも成功した。

 今回の技術は蛍光の検出に安価な装置を使えることから、がん検出の一般的な手法になり得ると研究グループは見る。患者由来の外科手術サンプルを使った検証実験を進めており、安全性試験などを経て、臨床試験への適用を目指す。

 糖鎖分解酵素の活性が促進されていることは、多くのがんで知られている。今回開発した試薬は分子内に糖構造を含み、それを他の糖に入れ替えることで、多くの種類の糖鎖分解酵素の活性を検出できるという。この特徴を生かし、さまざまな種類のがんへの適用拡大を狙う。

 今回の研究は、米国国立衛生研究所(NIH) 主任研究員の小林久隆氏および京都大学 化学研究所 教授の平竹潤氏の協力を得て実施した。研究成果は2015年3月13日付の英科学誌「Nature Communications」のオンライン速報版に掲載された(掲載ページ)。論文タイトルは「Sensitive β-galactosidase-targeting luorescence probe for visualizing small peritoneal metastatic tumours in vivo」(微小な腹腔内転移がんを可視化する高感度なβ-ガラクトシダーゼ蛍光プローブ)。