図:クラウドを使った監視システムのイメージ
図:クラウドを使った監視システムのイメージ
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 製造業などを対象にソリューションの普及活動を展開する任意団体Virtual Engineering Community(VEC)とNTTコミュニケーションズは、工場やプラント、ビルなどにおいて生産性の向上や保全業務の効率化をセキュアに実現する環境「Industry4.1J」を目指し、その技術的要件を確認する実証実験を2015年3月10日に開始する(ニュースリリース)。同プロジェクトの成果は一般に公開され、VECの会員に限らず全ての企業が活用できる。

 Industry 4.1Jは、ドイツが推進する「Industry 4.0」をはじめとした「第4次産業革命」と呼べるような社会革新を目指す取り組みをさらに進化させたもの。「4.1」はセキュアレベルでIndustry 4.0の一段階上であること、「J」は日本発を意味する。Industry4.1Jでは、世界中に点在する工場やビルをつなぎ、資産管理や消耗部品の発注管理、リモートサービス、高度制御技術のサポートなどを総合的かつ安全に管理できる環境を実現する。例えば、世界中の工場の正常な稼働状況をクラウド上の監視システムでリアルタイムにシミュレートし現場の状況と比較すれば、現場を制御するシステムの異常な運転状況を把握できる。

 今回のプロジェクトでは、監視システムの運用に当たって発生する現場とクラウド間の通信頻度・速度・量に現在設置されているネットワーク機器で対応できるのかなど、Industry4.1Jの実現に必要な技術要件を確認する。

 同プロジェクトに参加する企業は、NTTコミュニケーションズの他、アズビルとアズビルセキュリティフライデー(本社神奈川県藤沢市)、OSIsoftジャパン(本社東京)、サン電子、ジェイティエンジニアリング(本社東京)、シュナイダーエレクトリック(本社東京)、立花エレテック、デジタル、ベルチャイルド(本社大阪市)、富士電機、マカフィー(本社東京)、村田機械(本社京都市)、安川電機。VECは企画と運営窓口、ソリューション検証を担当し、NTTコミュニケーションズはプライベートネットワーク・クラウドサービス「Bizホスティング Enterprise Cloud」とVPNネットワーク「Arcstar Universal One」を提供する。

 実験ではまず、セキュリティ性に優れた通信プロトコル「OPC UA」を現行の制御装置に適用し、正常に通信できるか否かを実験する。他には、クラウドや制御システムに大容量のデータを高速に流通させることで、クラウドと現場の間で求められる接続構成と仕様を確認する。これにより、リアルタイムに異常を検知したり、クラウドへ現場データをバックアップしたりできるようにする。

 その他、VECの会員企業から提供される監視システムがBizホスティング Enterprise Cloud上で稼働するかをみる。さらに、実際に現場で運用されている制御ロジックを監視システムに組み込み、正常な稼働状況をシステムがシミュレートできるかどうかを確認。加えて、異常の原因が機械のバルブの故障なのか、それとも外部から侵入したマルウエアなのかといった判断をシステムができるかどうか実験する。