無線で電力を伝送するワイヤレス給電技術。既にスマートフォンなどの携帯機器では製品化済みだが、自動車でもいよいよ実用化のフェーズに突入する(関連するセミナー)。国際標準規格化の議論が大詰めを迎えており、2015年5~6月にも方向性が固まるためだ。

 これにより、自動車が止まった状態でのワイヤレス給電技術を用いた充電(定点充電)機能を市販車に搭載する環境が整う。本稿では、自動車向けのワイヤレス給電技術を巡るここ数年の動きを振り返ることにする。

 2013年11月、電動車両向けのワイヤレス給電が、実用化に向けて大きく1歩前進した。米自動車技術会(SAE)が電動車両向けのワイヤレス給電に用いる周波数帯域で、85kHz帯(81.38k~90.00kHz)を用いることで合意したと発表したのだ(図1)。ワイヤレス給電に使用する周波数帯域を巡っては、長年白熱した議論が続き、実用化を進める上でボトルネックとなっていた。

図1 米自動車技術会(SAE)が電動車両向けのワイヤレス給電で85kHz帯(81.38k~90.00kHz)周波数帯域として用いると発表した資料

 このとき合意に至った85kHz帯は、日本の自動車メーカー各社や米Qualcomm社などが主張した周波数帯域である。SAEが策定するワイヤレス給電向けの規格「SAE J2954」では、最大出力が3.7kW(一般家庭)、7.7kW(公共)、22kW(急速充電)、200kW(大型車)の4種類を規格に盛り込む方針という。