中国に進出する企業にとって、大きな課題になっているのが贈収賄のリスクだ。最近、日本企業を含む複数の外資系企業が摘発されている。日系自動車メーカーとの合弁会社幹部が相次いで汚職の調査対象になったことは記憶に新しい。英国大手製薬会社に、500億円超の罰金を課したこともある。

 中国では賄賂で処罰される範囲が日本より広く、民間企業の間における利益の供与・収受も処罰の対象になりうる。メーカーでは営業部門の従業員だけではなく、技術者にも大いに関係する。本稿では、公務員の贈賄に加えて、民間企業間の贈収賄である「商業賄賂」を含め、中国における法規制や、関連する実務を解説する。なお、本文中における見解は筆者の私見であることをあらかじめお断りしておく。

 習近平総書記は、公務員の汚職に「蒼蠅、老虎一起打(ハエも虎も一緒にたたく)」という方針を示し、トップから末端の政治家などを摘発の対象にすると宣言している。年々、その規制を強化しており、公務員は企業との接触に慎重になっている。これまで共に食事するなど親密な関係を築いていた公務員が接触すること自体を敬遠するようになるなど、現地でビジネスをしている人ならば規制の強化を肌感覚で感じていることだろう。

 第12期全国人民代表大会第2回会議(2014年2月10日付)における最高人民検察院の報告によると、中国検察当局が2013年の賄賂、汚職不法行為などの職務犯罪事件で立件捜査した件数は3万7551件、対象人数は5万1306人だった。前年比でそれぞれ9.4%、8.4%増だ。そのうち刑事責任を追及された贈賄者は前年比18.6%増の5516人と急増している*1

*1 2014年2月10日付 第12期全国人民代表大会第2回会議における最高人民検察院の報告に基づく。