宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、同機構航空本部が進めている2つの技術実証プロジェクトについて、2015年2月10日に報道陣向け説明会を開催した。1つは次世代エンジンに適用する高効率・軽量ファンタービン技術を開発する「aFJR」、もう1つは機体騒音の低減技術を飛行実証するプログラム「FQUROH」(フクロウ)だ。いずれも同本部の環境技術の研究開発プログラム(ECAT)の一環として行う。

図1 aFJRプロジェクトの概要と狙い
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図2 aFJRプロジェトで開発する要素技術
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得意領域で勝負

 aFJR(Advanced Fan Jet Research)プロジェクトは、航空機用エンジンのファンモジュールの効率化と軽量化および低圧タービンの軽量化による燃費の1%向上を目指すもの。「高効率の空力設計や複合材料などの部品設計技術は日本の航空機産業を支えてきた領域。得意の領域で短期集中開発する」(aFJRプロジェクトチームプロジェクトマネージャの西澤敏雄氏)。IHIの他、東京大学生産技術研究所や筑波大学大学院、金沢工業大学などが参加する。

 具体的には、ファンモジュールの高効率・軽量化技術として、[1]シミュレーションなどを駆使した高効率のファンブレード形状の設計技術、[2]繊維強化樹脂(FRP)製中空ブレードの設計技術、[3]ファンブレードを取り付けるメタルディスクの軽量化加工技術を開発する。

 加えて、低圧タービンの軽量化として高温強度に優れるセラミックス基複合材料(CMC)製ブレードの設計技術を開発する。現在、の最新エンジンの低圧タービンブレードには、チタンアルミニウム(TiAl)合金が使われているが、CMCに置き換えることでブレードを1/3程度に軽量化できるという。この他、ファンの外側を覆う吸音ライナーと呼ぶ部材の樹脂化技術も開発する(現在はアルミニウム合金製)。

2025年の次世代エンジンへの実装目指す

 aFJRプロジェクトは、燃焼室を通て噴射されるガスの量とファンによって、高速で後方に送り出される空気の量の比(バイパス比)の高いエンジンの開発を見据えたもの。具体的には、現行の最新エンジンのバイパス比が7~12程度なのに対し、同13のエンジンを目標としている。バイパス比が高いほど燃費は向上するが、そのためにはファンの直径を大きくする必要があり、効率の向上や軽量化が欠かせない。IHIの担当者は、「日本の航空機エンジン産業に大きく資するだけでなく、同分野での若手人材の育成にも大きく貢献する」と、aFJRプロジェクトへの期待を語った。2014年度に始まった同プロジェクトは、2018年度までに各種技術の性能評価試験を終え、20

 18年度以降に実際のエンジン設計へ技術移転する計画だ。「2025年頃に実用化されるとみられている次世代のエンジンへの搭載を念頭に開発を進める」(西澤氏)。米General Electric社なども低圧タービンブレードのCMC化など、同様の技術開発を進めているが、「コスト競争力で勝負したい」(IHI)と勝算はあるとの見通しをみせた。