マスク表面に湿度センサーを作製し、呼気と吸気を検出
マスク表面に湿度センサーを作製し、呼気と吸気を検出
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イオン液体でコーティングした不織布
イオン液体でコーティングした不織布
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 東京大学IRT(Information and Robot Technology)研究機構 教授の下山勲氏らのグループは、表面にイオン液体を塗布することで、口の中の湿度(口内湿度)を測れるようにしたマスクを開発した。このマスクで呼吸時の湿度変化を測り、マスクの装着が口内湿度を高く保つのに有効であることを実証した。

 インフルエンザウイルス繁殖防止のための口内湿度管理や、衣服の通気性評価、発汗の検出などの応用が見込まれる。ポルトガルで開催中の国際学会「MEMS 2015」(2015年1月18~22日)で発表する。

水を溶かすイオン液体を塗る

 一般的な電気式湿度センサーでは、多孔質セラミックスや吸湿性高分子膜を感湿体として使い、空気中の水分を吸収したときの電気容量や電気抵抗の変化から湿度を測る。今回はイオン液体をコーティングした不織布を使って、柔軟な感湿体を持つ湿度センサーを実現した。

 イオン液体は、その分子構造に応じてさまざまな気体や水蒸気を選択的に吸着し、電気抵抗が変化する。今回の研究では水を溶かす性質を持つイオン液体「EMIMBF4」を不織布や紙に塗布し、その後、イオン液体をゲル化して繊維表面に固定した。

 こうして試作した湿度センサーは、相対湿度を40~80%変化させると抵抗値が線形に変化。湿度に対する応答速度は一般的な半導体湿度センサーの10倍と高い。1本1本の繊維が感湿体となるためその表面積が大きく、水分の吸着や脱着の効率が高いためだ。この結果、呼吸のように周期の短い湿度変化を計測できる。従来、口内湿度の計測には吸入装置など大掛かりな計測機器が必要だった。