事故後の調査で見つかった主な異常(事故調査報告書を基に日経ものづくりが作成)。
事故後の調査で見つかった主な異常(事故調査報告書を基に日経ものづくりが作成)。
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 2008年8月3日に東京国際展示場(東京ビッグサイト)で発生したエスカレーターの逆走事故は、甘い設計や施工・保守が原因だったことが、国土交通省の昇降機等事故調査部会(以下、調査部会)の調査で明らかになった(事故報告書)。事故当初は、イベントに詰めかけた来場者が一度に大挙して乗ったことによる「乗り過ぎが原因」との見方が強かった。

 事故があったのは、同展示場西展示場アトリウムの4階展示会場へのメインの動線として設置された高さ15.8m、長さ約30mという長い上りエスカレーター。イベントに詰めかけた来場者が大勢乗った際に逆走し、搭乗者が1階の乗降口に押し戻されて下層部にいた約50人が転倒。そのうち10人が負傷して救急車で運ばれた。エスカレーターはある程度逆走したところで、搭乗者が減って負荷が軽くなって停止した。

 事故機は日本オーチス・エレベータ(本社東京、以下オーチス)製で、1996年4月に稼働を開始したもの。調査部会が公開した事故報告書によると、4階の床下にある駆動装置を載せた「可動ベッド」と呼ぶ架台が、大勢の乗員の荷重に耐えきれずにずれたことによってチェーンにたるみが生じ、駆動モーターの力が踏段(ステップ)を駆動する歯車にきちんと伝わらず逆走したことが分かった。可動ベッドがずれたのは、固定していたボルトが緩んでいたり、取りつけてある鋼板が薄いためにねじ山のかみ合いが不十分だったりしたことが原因だった。ずれを防止するために取り付けてあった板も溶接が不適切で機能を果たしていなかったという。