関西大学と帝人は2015年1月8日、人間の動作をデータに変換する「圧電ファブリック」を開発したことを発表した。加えられた力に応じて電力を発生する「圧電体」として「ポリL乳酸繊維」、発生した電力の電位を感知する電極として炭素繊維をファブリックに織り込むことで、ファブリックの曲がり、伸縮、ねじりの方向や強さをデータに変換する。関西大学システム理工学部教授の田實佳郎氏(写真)と帝人が共同開発した。

関西大学システム理工学部教授の田實佳郎氏
関西大学システム理工学部教授の田實佳郎氏
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 圧電体としては、強い圧電性能を持つ「PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)」がもっとも汎用的に使われている。だが、PZTは加工の自由度が低い無機物のセラミックスであり、鉛を含むため人体に触れる衣服では使用しにくい。加工の容易な有機高分子材料の圧電体としては「PVDF(ポリフッ化ビニリデン)」があるが、PVDFは圧電性能が弱く、温度によって電位が変化する「焦電性」の影響を受けるため、誤動作が起きる可能性がある。

 これに対して、圧電ファブリックが採用するポリL乳酸繊維は柔軟性、透明性があり、太さ数10μメートル程度の糸に加工して簡単に織り込める。有機高分子材料としては強い圧電性能を持つため、焦電性による誤動作も発生しないという。

 圧電ファブリックは織り方によって、平織デバイス、綾織デバイス、サテンデバイスの3種類がある。それぞれ縦糸と横糸の交錯点の拘束状態が異なるため、曲げやねじれ対する変形の仕方が異なっており、平織は単純曲げ、綾織は伸縮/ねじり/ずり/Z方向、サテン織りはねじり/回転を感知する。「これら3つの織り方を組み合わせることで、ニーズに合わせたファブリックの設計が可能になる」(帝人新事業推進本部環境エネルギー・先端素材事業推進班市場開発担当課長の山本智義氏)。