図1●ハロゲン化金属ペロブスカイト型の代表格であるヨウ化鉛メチルアンモニウムの構造
図1●ハロゲン化金属ペロブスカイト型の代表格であるヨウ化鉛メチルアンモニウムの構造
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 物質・材料研究機構(NIMS)のナノ材料科学環境拠点(GREEN)は2015年1月7日、「第9回ナノ材料科学環境拠点シンポジウム」を東京都内で開催し、最近注目を集めているペロブスカイト型太陽電池の研究開発体制を整えたことを明らかにした。

 GREEN副拠点長であり、ペロブスカイト型太陽電池特別拠点チームリーダーである宮野健次郎氏は「2009年にペロブスカイト型太陽電池の高効率化の研究成果が発表されて以降、特に最近2年間に世界各国の研究開発チームはより高効率化の研究成果を続々と発表し、ある種の“旋風”が起こっている。こうした状況の中で、2009年10月に設置されたGREENの中にペロブスカイト型太陽電池特別拠点チームを、2014年10月14日に発足させた」と、同チームを発足させた経緯を説明した。

 ナノテクノロジーを活用して環境技術を研究開発する目的で設置されたGREENは、太陽電池をグリーンイノベーションの重要な要素技術ととらえ、これまでにも光電変換原理の解明や、その高効率化と新材料の追究を続けてきた。こうした中で「ハロゲン化金属ペロブスカイト型太陽電池は簡単な作製法にもかかわらず、ある程度の高い発電効率を示すという研究成果が相次いで発表され、高効率化がまだ続いている」と、宮野氏は状況を解説する。現在、製品化されているSi(シリコン)系結晶系やアモルファス系、CICS(化合物)系などの太陽電池に比べて、「まだ研究開発途上である点から、その研究開発拠点として設置した」という。

 現在、同特別拠点チームはハロゲン化金属ペロブスカイト型の代表格であるヨウ化鉛メチルアンモニウム(図1)などの太陽電池作製法を追究している。同チームのリーダーの白井康裕氏は「ハロゲン化金属ペロブスカイトを用いた太陽電池がなぜ高効率なのかなどの高性能発揮の仕組みを、イオン性結晶の化学的問題を意識しながら、通常の固体物性の研究手法と計測手法を用いて取り組んでいる」と説明する。

 ハロゲン化金属ペロブスカイト型太陽電池を140℃以下の低温で溶液プロセスによって作製している。現在の同太陽電池は、銀層の上にカルシウム層、PCBM(フラーレン誘導体)層、ヨウ化鉛メチルアンモニウム層、PEDOT・PSS(高分子ポリマー)、ITO(チタン・スズ酸化物)・ガラスを積層した構造で、ITO・ガラス層から太陽光を入射する。現在、「溶液プロセスなどの成膜条件を最適化し、光電変換効率は10~12%程度を再現性良くつくれるようになった」(白井氏)。

 作製した同太陽電池が光発電する際の電流と電圧を計測する際に、走査方向や速度によって太陽電池の電流・電圧特性が異なるという問題があったが、この問題を解決。「太陽電池の電流・電圧特性を計測する基盤技術を確立した」という。また、光を連続照射しても、この走査方向・速度によって太陽電池の電流・電圧特性が異なるという現象が起きないことも確認した。これによって、「いろいろなハロゲン化金属ペロブスカイト型太陽電池の特徴を検証できるようになった」と、研究体制を整えたことを強調する。

 さらに、試作したハロゲン化金属ペロブスカイト型太陽電池を「標準的なpin接合の“無機半導体モデル”という簡単なモデルで近似することで、いろいろなパラメーターを抽出する作業を進めている」(宮野氏)と説明する。