トリナ・ソーラーのピエール・ヴェルリンデン副社長(出所:日経BP)
トリナ・ソーラーのピエール・ヴェルリンデン副社長(出所:日経BP)
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トリナ・ソーラーの両面ガラスの太陽光パネルの裏面側(出所:日経BP)
トリナ・ソーラーの両面ガラスの太陽光パネルの裏面側(出所:日経BP)
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 中国の大手太陽光パネルメーカーのトリナ・ソーラーのピエール・ヴェルリンデン(Pierre Verlinden)副社長 兼 太陽光発電技術国家重点実験室 主任研究員に、今後の同社の太陽光パネルの開発の方向性について聞いた(取材日:12月2日、太陽電池セルを中心とする講演の関連記事)。

 ヴェルリンデン副社長は、ベルギー出身で、米サンパワーの高出力の結晶シリコン系太陽電池セル(発電素子)、太陽光パネルの研究、開発、製造、実用化を牽引してきた。2012年にトリナ・ソーラーに入社し、同社の開発を主導している。

――トリナ・ソーラーは、両面ガラスの太陽光パネルにも注力している。信頼性の向上のほか、メガソーラー(大規模太陽光発電所)の平準化した発電コスト(LCOE:設備費や維持費、設備利用率などを加味したトータルの発電コスト)の抑制にも寄与すると聞く。

ヴェルリンデン 信頼性の向上によって、LCOEの削減に寄与できないかと、トリナ・ソーラーでは3年前に開発を始めた。

 既存の太陽光パネルには、樹脂製のバックシートが劣化し、信頼性に悪影響を生じかねない課題がある。特に、高温・高湿な環境や、砂漠などの環境に設置した場合である。劣化に対して最良の対策は、バックシートをガラスに替えることだと考えた。

 表面と裏面の両方をガラスで封止すれば、樹脂製のバックシートのように劣化せず、太陽光パネルの信頼性が増し、高温・高湿を始めとする過酷な場所に設置した場合でも、高い信頼性を実現できる。

 さらに、両面を銅箔で覆うという、通常より10倍以上、厳しくなる条件で試験した場合でも、PIDと呼ばれる、高温・高湿下で起きる劣化現象は、3%以内の発生率に収まる。

 アルミ製フレームがないために、既存のパネルより、太陽光パネル表面への埃や砂などが雨で流れやすく、雪も滑り落ちやすいために、メンテナンスコストも減り、積雪後の発電量の低下も抑制できる。

――過酷な場所に建設される太陽光発電所など、限られた用途の中量生産品としての展開を想定しているのか。あるいは、一般のメガソーラーなど、大量生産できる用途を想定しているのか。

ヴェルリンデン 大量生産する用途を狙っている。このため、60個の太陽電池セル(発電素子)で構成したパネルだけでなく、72個のセルで構成したパネルを、すでに製品化している。

 電圧1500Vに、両面ガラスのパネルでいち早く対応したのも、72セル品と同じように、大規模な出力のメガソーラーを、発電事業者が効率的に構成できるようにするためである。

 1500Vの発電システムや、72セルの太陽光パネルで構成すれば、BOS(太陽光パネル以外のシステムコスト)を下げられる。