「ニコニコ動画」などを手がけるドワンゴは、FPGA/ASICの技術者の募集を始めた(関連記事)。その背景にあるのは、他社には真似できないサービスを実現するために、独自仕様のサーバーやデータセンターを自作しようという構想だ。ハードウエア技術者の採用に乗り出した狙いを川上会長に聞いた。

――なぜFPGAやASICの技術者を採用するんですか。

ドワンゴ 代表取締役会長 CTOの川上量生氏
写真:栗原克己

川上 IT企業は、最新のプラットフォームという同じ土俵で勝負しようとしますよね。例えば、最近のWebサービスはAWS(Amazon Web Services)で作る人が多い。しかし、それでは同じ条件で勝負することになるので、いち早くやれるかどうかの競争になって、「いち早く」が終わった後はレッドオーシャンになってしまう。

 僕は競争する環境自体を変えることがすごく重要だと思っています。AWSでできないサービスって何だろうと考えると、OSも独自なやつを作ろうとか、ハードも専用のアプライアンスを作るかとか、それでチップも作るかという話になりますよね。全然、自然な話だと思うんですけど。

 もともとゲーム機がそうだったじゃないですか。セガサターンよりもPlayStationが優勢になったのは3Dの性能が高かったのが一番大きな理由だったと思う。これはクライアント側の話ですが、僕はサーバー側でそれを起こせないかと。

 オリジナルのサーバーを作るのは僕のテーマで、ずっと昔から言っていたんですが、今その方向性がある程度形になってきたと。うちのエンジニアも最初は引いていて嫌がってたんですけど、最近理解を示すエンジニアが現れたので、ハードもやろう、データセンターも作ろうと。

――どういうサービスをやるんですか。

川上 簡単にいうと、動画のサービスって重要なのはインターネットの帯域なんですよ。動画サイトの場合、普通はインターネットにつながる口の太さが問題になるんですよね。うちの場合だと、「ニコ動」ってたぶん400Gビット/秒くらいの回線を持っている。