発表する経済産業省 資源エネルギー庁の松山泰浩・新エネルギー対策課長(右)、省エネルギー部・新エネルギー部の江澤正名・新エネルギー対策調査官(左)(出所:日経BP)
発表する経済産業省 資源エネルギー庁の松山泰浩・新エネルギー対策課長(右)、省エネルギー部・新エネルギー部の江澤正名・新エネルギー対策調査官(左)(出所:日経BP)
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左列が「現状では、これ以上の接続は難しい」とする太陽光発電の受け入れ可能量(出所:経済産業省)
左列が「現状では、これ以上の接続は難しい」とする太陽光発電の受け入れ可能量(出所:経済産業省)
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 経済産業省 資源エネルギー庁は12月18日、九州電力をはじめとする電力会社各社による、再生可能エネルギー電力の接続申し込みへの回答の保留の解消に向け、固定価格買取制度(FIT)の運用を見直すと発表した。新たな出力抑制のルールを導入する。

 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 新エネルギー小委員会と、同小委員会の系統ワーキンググループ(系統WG)で課題や対応策を検討し、2014年内に接続保留の解消策を打ち出すことを目指してきた。

 18日午前に開催された新エネルギー小委員会における検討の結果を踏まえ、FITの運用を見直し、きめ細かく出力制御できるようにして、電力会社が送電網を安定的に運用しやすくしながら、より多くの再生可能エネルギー電力を導入しやすくする。

 四つの出力抑制を導入する。(1)出力抑制の範囲を、住宅用まですべての太陽光発電に拡張、(2)出力抑制の実施期間を日レベルから時間レベルに変更、(3)パワーコンディショナー(PCS)の遠隔制御機能の搭載の義務化、(4)出力抑制の期間を30日以上に増やせる指定電気事業者制度の活用の拡大、である。

 (1)の出力抑制の範囲は、従来の出力500kW以上から、出力500kW未満まで拡大する。ただし、住宅用(10kW未満の余剰買取)の出力制御については、出力10kW以上の出力抑制で間に合わなかった場合に実施し、できるだけ出力抑制の対象とならないように配慮する。

 出力抑制の範囲は、太陽光発電だけでなく、風力発電でも、出力500kW未満まで拡大する。

 バイオマス発電については、出力抑制の優先順を明確化した。必要な範囲で出力抑制制御する中で、化石燃料混焼発電、バイオマス専焼発電、地域型バイオマス発電の順で出力を抑制する。ただし、燃料の貯蔵が困難だったり、技術的な制約によって出力抑制が困難な場合は、出力抑制の対象外とする。従来、バイオマス発電の出力抑制の優先順は、化石燃料を燃料とする火力発電と同じ扱いだった。

 (2)の時間レベルの出力抑制と、(4)の出力抑制を30日以上とする指定電気事業者制度の活用の拡大は、(3)のPCSの遠隔制御を前提とした対応である。

 (2)では、「30日ルール」と呼ばれる、電力の供給量が需要量を上回る場合、回避措置を実施した上で、太陽光・風力発電システムを1年間のうち上限30日間まで、無償で出力を抑制できるルールを、日単位から時間単位のより電力需給の実態に合った出力抑制に変え、国内全体の接続可能量を拡大する。

 PCSの遠隔制御によって、本来、出力抑制が必要ない時間帯まで含めて売電を止めていた運用から、太陽光発電は年間360時間まで、風力発電は年間720時間まで、時間単位で無駄の少ない出力抑制に変える。太陽光発電の適用時間を、風力発電の半分としたのは、夜間の日射のない時間は、出力抑制する必要がないためである。

 (4)の出力抑制を30日以上とする指定電気事業者制度は、現在、北海道電力に適用されている。接続申し込み量が、現在のFITの運用ルールにおいて、接続可能量を上回っていたり、上回ることが見込まれる電力会社に適用され、無補償の出力抑制の期間を30日以上にできる。

 12月16日の系統WGで確定した、現時点での電力会社各社の接続可能量(関連記事)に基づいて、北海道電力以外に、東北、四国、九州、沖縄、北陸、中国の電力6社を、22日付で新たに指定電気事業者に指定する予定。

 今後、指定電気事業者の管内で、太陽光発電システムの設備認定を受けようとする発電事業者は、30日以上の出力抑制を受ける可能性があることを前提に連系することになる。この出力抑制も、日単位でなく、PCSの遠隔制御による、時間単位の抑制に変わる。

 発電事業者にとっては、出力を抑制される時間の上限が予想できず、開発時の事業計画や融資を受けた資金の返済計画などを立てにくくなる恐れがある。

 さらに、電力会社が恣意的に、特定の発電事業者の出力を無期限に止められる制度でもあることから、経産省では、電力会社に対して、出力抑制の期間の見込みなどを事前に示すなど、発電事業者の事業を予測しやすいようにするほか、公平性や透明性を確保するための情報開示の方法を検討していく。

 先行して同様の制度を導入したスペインの例では、出力抑制の時間帯は1年間で約2%に留まっており、日本でも実際の出力抑制は軽微で済む可能性があるとしている。

 (3)のPCSへの遠隔制御システムの搭載には、まず1~2年間のシステム開発の期間を要するとしている。既存の大きなメガソーラー(大規模太陽光発電所)の一部には、すでに遠隔制御システム付きのPCSが導入され、電力会社による制御が可能になっている。

 経産省では、標準化した遠隔制御システムを採用する方針で、通信やソフトウェア、運用ガイドラインなどを含めて検討していく。

 遠隔制御システム付きのPCSを発注できるようになるまでの間は、導入後に外付けなどで付加することを約束した上で連系する。

 経産省によると、PCSへの遠隔制御システムの搭載による追加コストは、住宅用の出力10kW未満で5000円、10kW~500kWで5~10万円、500kW以上で70~100万円になる。経産省は、遠隔制御システム付きのPCSの開発も支援する。

 これらの運用の見直しは、省令の改正によって実現し、改正後のルールは、パブリックコメントを経て、2015年1月中旬をめどに施行する予定。施行前に設備認定を申し込んだ太陽光発電システムについては、従来のルールで運用し、施工後に申し込まれた発電システムは、新たなルールで運用する。

 申し込みに未回答だった発電システムのうち、指定電気事業者制度が指定される電力会社の管内の案件については、(3)パワーコンディショナー(PCS)の遠隔制御機能の搭載の義務化、(4)出力抑制の期間を30日以上、が適用される。

 また、太陽光発電以外の再生可能エネルギーの導入を促進するため、地熱発電や水力発電は出力抑制の対象とせずに接続できる。バイオマス発電は新たな出力抑制ルールの下で接続する。風力発電は、接続可能量を設定している電力会社の管内の場合は、その接続可能量に到達するまでは接続し、接続可能量の超過が見込まれる場合には、指定電気事業者制度の活用を検討する。

 現在、接続保留中の電力会社には、今後、できるだけ早く接続保留を解除するように、促していく。

 また、今後、再生可能エネルギーの導入を拡大するために、主に三つの策を打ち出す。第1に、蓄電池の導入支援策を検討していく。発電事業者による導入の支援や、電力会社による大規模蓄電池の電力網への導入の実証事業の支援などが候補となる。

 第2に、地域間連系線の活用などによって、電力会社単位における最適な導入ではなく、日本全体でより効率的に再生可能エネルギーを導入できるようにする。優先給電指令や地域間連系線の利用ルールを見直す上、FIT全体の見直しに関連して、電力会社間の新たな精算ルールや、地域内・地域間連系線の増強費用の分担方法などの検討を速やかに開始する。

 そして、今後、進むとみられるエネルギーミックスのあるべき姿と連関させながら検討し、広域的運営推進機関などの場で具体化していく。

 第3に、上位系統の増強時の費用負担に、入札方式の導入を検討する。再生可能エネルギーの連系に際し、エリア全体の接続可能量を超えてはいないものの、 ローカルな上位系統の制約がある場合に、現在、東京電力が群馬県北部で実施中の入札方式を全国に広げていく。

 このほか、福島県における再生可能エネルギーの導入には、特別に配慮する。富岡町にある東京電力の新福島変電所などを増強し、地域の復興に寄与する発電事業者の連系を可能にするスキームを福島県と構築するほか、発電システムや送電線、蓄電池などの導入支援策を検討している。