量子ドット技術のベンチャー企業「NSマテリアルズ」が2014年12月16日に記者発表会見を開催し、独自の量子ドットを用いた広色域の液晶ディスプレーを披露した。今回披露したのは、5型、32型、42型の広色域液晶ディスプレー。同社は既に営業活動を進めており、ユーザーによる評価も始まっているという。2015年内に、採用に結びつけたいとしている。

 量子ドットとは数nm~数十nmの寸法の化合物半導体の粒子であり、蛍光体のように使える。従来の蛍光体よりも鋭い発光ピークを持つことから、ディスプレーの広色域化と低消費電力化の両立を可能にする材料として、期待を集めている。

 同社の量子ドットの特徴は、その製造技術にある。微小な流路を持つマイクロリアクターと呼ばれる部品を使い、微小な空間で化学反応を起こして量子ドットを合成する。この結果、(1)量子ドットの寸法、すなわち蛍光波長の制御が容易、(2)粒径分布が均一なため、鋭い発光ピークを持つ、(3)結晶性が良く、信頼性が高い、という特徴が得られると同社は主張する。さらに、このように優位性のある量子ドットを、従来の製法に比べて短時間で大量に製造できるという。

微小な空間で化学反応を起こして量子ドットを合成する
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 「量子ドット分野では海外メーカーが先行し、10年以上も性能向上の開発を続けている。しかし、我々は4~5年と短い期間で、先行メーカーと同等の性能に追いつくことができている」。NSマテリアルズ 代表取締役の金海榮一氏はこのように語り、自社の技術に自信を見せる。

 同社はこの製造技術を「マイクロ空間科学技術によるナノ材料合成法」と呼んでいる。この技術は、産業技術総合研究所(産総研)と共同開発したものである。NSマテリアルズは、産総研が支援する「産総研技術移転ベンチャー」であり、同技術を独占的に使用する権利を得ている。