2014年12月3~5日に開催されたディスプレー関連の国際学会「International Display Workshops(IDW)」では、塗布型の有機ELディスプレーや塗布型のTFTの発表が非常に多かった。

 セイコーエプソンは、塗布型有機EL(OLED)用インクジェット技術の開発戦略について報告した(論文番号:OLED3-1)。同社は現在、180ノズルを2列に配置した360dpiの解像度のインクジェットヘッドを持っている。将来的には、400ノズルを2列に配置した600dpiの解像度のインクジェット技術を開発するという。

 同社は独自のインクボリューム制御と、複数のノズルを使って平均化させる技術によって、1画素当たりの総インク量を均一に保っている。また、ホール輸送層(HTL)の表面とバンクの壁面の接触角を同等にすることによって、HTLの表面全体に均一に電子輸送層(EML)を塗ることができるという。ボトムエミッションだけでなくトップエミッション構造もインクジェットで実現した。トップエミッションではホール注入層(HIL)の膜厚が光学特性に大きな影響を与えるため、特別に調合したインクを用いて非常に均一なHIL膜厚を実現したという。

 東京エレクトロンはセイコーエプソンと共同で、塗布型有機EL用の第8.5世代基板対応の製造装置について報告した(論文番号:OLED3-2)。HILを各色ごとのバンク内に打つ時のインクのドロップ数を制御することで、色ごとのHIL膜厚を制御することに成功した。「この技術を用いて、共振構造のトップエミッションを実現できるか」と質問したところ、「技術的には十分可能だ」との回答を得られた。共振構造の光学特性を補償するためには非常に精密な膜厚コントロールが必要なので、実際の量産ラインでの制御は相当難しいだろうが、こうして技術的な可能性が見えてきたというのは良いニュースである。