トリナ・ソーラーのピエール・ヴェルリンデン副社長
トリナ・ソーラーのピエール・ヴェルリンデン副社長
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タンデム式セルによって、薄膜シリコン系の変換効率を27%に高める
タンデム式セルによって、薄膜シリコン系の変換効率を27%に高める
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半分に切断したセルを使って、インターコネクトにおける損失を低減する技術や、バックシートなどに反射材を付加することで、これまでは発電に使えなかったセル間を抜けていく光を、セル上に入光させて発電量を増やす
半分に切断したセルを使って、インターコネクトにおける損失を低減する技術や、バックシートなどに反射材を付加することで、これまでは発電に使えなかったセル間を抜けていく光を、セル上に入光させて発電量を増やす
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156mm角のセル60枚で構成し、単結晶シリコン系では業界最高となる出力335.2Wを達成したパネル
156mm角のセル60枚で構成し、単結晶シリコン系では業界最高となる出力335.2Wを達成したパネル
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両面ガラスのパネルを、高信頼性を前面に出して拡販
両面ガラスのパネルを、高信頼性を前面に出して拡販
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PIDを3%以内の発生率に収める
PIDを3%以内の発生率に収める
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 中国の大手太陽光パネルメーカーのトリナ・ソーラーのピエール・ヴェルリンデン(Pierre Verlinden)副社長 兼 太陽光発電技術国家重点実験室 主任研究員は12月2日、日本法人のチェン・イエ(Chen Ye)新社長の就任披露会において、今後の同社の太陽光パネルの開発の方向性について講演した(図1)。

 ヴェルリンデン副社長は、ベルギー出身で、2012年にトリナ・ソーラーに入社する前は、米サンパワーに在籍し、高出力の結晶シリコン系太陽電池セル(発電素子)、太陽光パネルの研究、開発、製造、実用化を指揮してきたことで知られる。

 トリナ・ソーラーの研究開発の強みは、中国にある太陽光発電技術国家重点実験室にあるとしている。原料からシリコンの結晶化、ウエーハ、セル、パネル、発電システム、信頼性試験、量産前の試作まで、1カ所で一貫して取り組んでおり、150人以上の研究者や技術者、200人以上のオペレーター(製造装置の運用担当者)が在籍しているという。

 ヴェルリンデン副社長によると、2014年は、すべてのタイプの太陽電池セル、太陽光パネルの変換効率で、大きな成果があった年と位置付けている。トリナ・ソーラーが手掛けているバックコンタクト(IBC)型の結晶シリコン系では、156mmウエーハによるセルで変換効率22.9%、オーストラリア国立大学とトリナ・ソーラーが共同開発したセルで同24.4%をそれぞれ達成した。

 トリナ・ソーラーでは現在、多結晶シリコン系パネルの変換効率17.9%(出力260W)品、単結晶シリコン系で同19.2%(出力275W)品を量産している。

 今後の量産化に向けて、PERC(Passivated Emitter and Rear Cell)式の単結晶シリコン系パネルで同20.2%(出力290W)品のパイロット生産(試作)を完了した。電極の形成にスクリーン印刷を適用して低コスト化した。また、バックコンタクト型で、同22.5%(320W)品のパイロット生産を始めている。

 両方式の最高変換効率に、量産品の平均変換効率を近づけていく点が、技術の発揮のしどころだと強調している。

 その後、変換効率をさらに高めていくには、「タンデム式」、「直接接合式」などと呼ばれる、発電する光の波長が異なる材料を接合する方式のセルを採用する必要があり、開発を検討している。

 ヴェルリンデン副社長は、タンデム式セルによって、変換効率を27%(出力385W)に高めることができるとみている。原理的には同約40%まで向上できるが、コストや量産性を考慮すると、現実的には27%にとどまる(図2)。

 タンデム式の課題は、コストや量産性にある。現状では、汎用品として普及する段階にはなく、今後、従来にはない材料を使うことで、汎用品として普及できるようになるのではないかとの見通しを示した。

 セルの高出力化とともに、太陽光パネルの技術の面からも高出力化を進めていく。例えば、半分に切断したセルを使って、インターコネクト(セル同士の配線)における損失を低減する技術や、バックシートなどに反射材を付加することで、これまでは発電に使えなかったセル間を抜けていく光を、セル上に入光させて発電量を増やす(図3)。

 156mm角のセル60枚で構成し、単結晶シリコン系では業界最高となる出力335.2Wを達成したパネルは、こうした技術を採用しており、量産化に向けて検証中という(図4)。

 また、バックシートの代わりにガラスを使い、両面をガラスで封止する両面ガラスのパネルも普及していくとみている。同社では、両面ガラスのパネルを、高信頼性を前面に出して拡販していく(図5)。

 温度や湿度、塩害といった厳しい環境に設置しても、樹脂製のバックシートのように劣化せず、長期信頼性が向上する。

 両面を銅箔で覆うという、通常より10倍以上、厳しくなる条件で試験した場合でも、PIDと呼ばれる、高温多湿下で起きる劣化現象は、3%以内の発生率に収まる(図6)。