戦略の大幅な転換を決定したE.ON社の経営陣。右から3人目がJohannes Teyssen最高経営責任者(出所:E.ON社)
戦略の大幅な転換を決定したE.ON社の経営陣。右から3人目がJohannes Teyssen最高経営責任者(出所:E.ON社)
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 ドイツの大手エネルギー会社のE.ON社は11月30日、従来の業態を大きく変え、再生可能エネルギー、配電網、顧客のソリューションという三つの事業に注力すると発表した。

 同日開催した監査役会で、経営陣が提案し、全会一致で承認した。分社した新会社は、E.ON社の連結対象外にする。

 既存の主力事業である、発電事業、グローバルなエネルギー取引事業、天然ガスの探鉱・生産事業を分社する。また、スペインとポルトガルの事業を売却するほか、イタリアの事業の売却、北海における探鉱・生産事業の戦略的見直しを模索している。

 E.ON社のJohannes Teyssen最高経営責任者(CEO)によると、世界のエネルギー市場や技術革新、顧客の要望に対応するために、大胆な変革が必要だと判断したという。

 しかし、E.ON社の既存の事業モデルは幅広いものになり過ぎていたために、こうした新たな課題に対応するのが難しく、大幅に事業を組み替えることにした。

 2015年は、新会社の株式上場の準備に充て、2016年に分社し、E.ON社と新会社の両社がそれぞれ、必要な資金を確保し、雇用を生み出せる会社とするための足場を固めていく。

 Teyssen最高経営責任者は、「今回の分社は、従業員の雇用削減を目的とするものではない」と強調している。

 既存の主力事業を分社した後のE.ON社は、約4万人の従業員で、再生可能エネルギー、配電網、顧客のソリューションという三つのコア事業を手掛ける。

 顧客数は約3300万とし、新たなアプローチ方法で、新事業を開拓していく。このため、従来、43億ユーロとしていた2015年の設備投資額を、5億ユーロ積み増す。

 再生可能エネルギーでは、欧州など重点を置く地域における風力発電と太陽光発電に注力する。

 欧州やトルコにおいて、分散型エネルギー・ネットワークを確立するとともに、分散型電源を生かした新たなエネルギー関連サービスを提供していく。

 既存の主力事業を集めた新会社では、エネルギー市場や技術の変化に合わせ、市場や技術の信頼性の向上に寄与するサービスに注力する。

 約2万人の従業員で、欧州における既存の電源による発電所の統合を主導するほか、将来の電力システムに向けた革新的なサービスを開発、提供していく。