太陽光発電導入量の将来予測と懸念(出所:福島県)
太陽光発電導入量の将来予測と懸念(出所:福島県)
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上位系統が先申し込みで満杯の場合、下位系統の後申し込みは保留すべき(出所:福島県)
上位系統が先申し込みで満杯の場合、下位系統の後申し込みは保留すべき(出所:福島県)
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 福島県は11月27日、再生可能エネルギー設備の接続申請の回答が保留されている問題に関する緊急提言を宮沢洋一経済産業大臣に提出した。同提言は、福島県が設置した「福島県再生可能エネルギー導入推進連絡会」の系統連系専門部会(部会長・横山隆一早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科教授)で検討し、まとめたもの。

 提言は、10項目からなる。まず、課題解決に向けた基本的な考え方として、(1)再生可能エネルギー最大限導入の政府方針の堅持、(2)再エネ発電量の現実の増加速度に応じた対策の実施――を挙げた。

 次に短期的対策として、(3)「空押さえ」対策・後発事業受入れ円滑化と回答保留の即時解除、(4)電力系統接続状況の情報公開と自治体関与の仕組みづくり、(5)小水力・地熱・バイオマス発電の受入れ容量の確保――

 中期的対策として、(6)再エネ最大限導入を実現する接続可能量の継続的見直し、(7)地域間連系線の活用など電力の広域的運用の強化、(8)新たな需給調整システムの構築と再エネ優先給電の徹底――を挙げた。

 最後に、福島の復興再生に向けた特別対策として、(9)地域的な送電網接続問題に関する特別対策の実施、(10)再エネ大量導入を実現する次世代マイクログリッドの構築――を挙げた。

 短期的対策の(3)のなかで、買取価格と系統接続を確保しながら事業に着手しない「空押さえ」(滞留案件)の問題点を指摘し、その解消に向けた対策を提言していることが注目される。「空押さえを放置したまま接続上限を設ければ、堅実に事業を進めている後発事業が門前払いされ、再エネ導入が止まる可能性が高い」と指摘する。

 そのうえで、「国と電力会社は、送電網への接続承諾を受けた発電事業の速やかな事業化と空押さえの排除、後発事業の受入れを円滑化する制度改善を至急実施し、送電網を有効活用しつつ、接続申込みへの回答保留措置を即時解除すべき」と提言。具体的な方策として、「事業化が遅延している設備認定の取消とそれに連動した接続承諾などの失効措置」「接続申込み済み案件の事業化遅延を防止するルールづくり」「空き容量が生じた場合の情報公開と後発事業の受入れ円滑化(接続優先順のルール整備等)」を提示した。

 接続契約の失効に関しては、「設備認定が取り消された場合でも、電力会社への接続申込みや契約は失効しないとの考えがあるが、 電力会社は複数の対応により契約などを失効させることができる」との見解を示し、その方法を挙げている。

 また、福島の復興再生に向けた特別対策を提案した(9)の具体策として、「東京電力の不使用送電網の利用促進」「避難指示区域などの送電網整備などへの財政的措置と買取制度上の特例措置」「東北電力の系統接続問題を改善するモデル的取り組みや優先接続枠の検討」「電力系統への負担を軽減する地産地消型再エネ設備の導入拡大」を挙げた。

 また(10)では、「クラスター拡張型をはじめとした次世代マイクログリッドを導入し、新たなエネルギーネットワークを構築する必要がある」とし、国に対し、「双方向情報通信インフラや蓄電池等の整備と技術開発に必要な財政措置を至急講じ、福島に先進的な次世代マイクログリッドのモデルを構築すべき」と提言している。