11月7日に開催した起工式には、GEエナジー・フィナンシャルサービスの幹部も出席(出所:日経BP)
11月7日に開催した起工式には、GEエナジー・フィナンシャルサービスの幹部も出席(出所:日経BP)
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完成予想図。約92万枚の太陽光パネル、米GEと東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製のパワーコンディショナーを設置(出所:日本GE)
完成予想図。約92万枚の太陽光パネル、米GEと東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製のパワーコンディショナーを設置(出所:日本GE)
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 11月7日、岡山県瀬戸内市の錦海塩田跡地を活用した「瀬戸内メガソーラープロジェクト」の起工式が開催された。同プロジェクトは、瀬戸内市が所有する約500haの塩田跡地のうち約260haに、出力約230MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)を建設するもの。着工済みのメガソーラーとしては国内最大規模となる。

 メガソーラーによる売電事業の主体となる特定目的会社(SPC)「瀬戸内 Kirei 未来創り合同会社」には、米GEエナジー・フィナンシャルサービスが60 %、東洋エンジニアリングが30 %、くにうみアセットマネジメント(東京都千代田区)が10 %を出資する。総事業費は約 1100 億円を見込み、そのうち約 900 億円をプロジェクトファイナンスで調達する。今年9月に三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の 3 行を幹事銀行とした28金融機関が参加したシンジケートローンによる限度貸出契約を締結している。

 式典には関係者約200人が出席した。式典後の記者会見で、くにうみアセットマネジメントの山崎養世社長は「再エネ普及と地域創生という視点で意義が大きい。自治体のリーダーシップによって、わずか2年で着工にこぎつけた」と話した。塩田跡地を所有する瀬戸内市の武久顕成市長は、「メガソーラーを生かし、子供たちに明るい未来を残したい。再エネで成り立つ街としてどのようにアピールしていくか検討していく」と話した。

 メガソーラー発電施設は、2019 年第 2 四半期に商業運転を開始する予定。プロジェクト全体は、「メガソーラー発電事業」を核に、約30億円を投じて堤防や排水ポンプなどを補強する「安心安全事業」、塩田跡地の湿地などの自然環境を維持しつつ、地域を活性化する「まちづくり・環境保全事業」の3つからなる。同日、瀬戸内市の武久市長は、「太陽のまちプロジェクト」を発表し、25年間で得られる総額約100億円の地代収入を地域活性化につなげる構想を示した。

 建設工事全体のとりまとめとメガソーラー関連施設の建設を東洋エンジニアリング、堤防の補強などインフラ関連の施工を清水建設などが担当する。発電した電力は全量を中国電力に売電する。商業運転開始後の発電設備のO&M(運営・保守)は、中電工が中心となって行う予定。

 メガソーラー設備として、塩田跡地の生態系保全に配慮しつつ、太陽光パネルを約92万枚設置する。パワーコンディショナー(PCS)は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)製と東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用する。海抜より低く軟弱な地盤に対応するため、パネルを設置する架台は、地盤の性状によって、杭基礎とコンクリートによる置き基礎を使い分ける。雨水が貯まりやすいため、設置高は1m以上になる。

 当初、「瀬戸内メガソーラープロジェクト」は、日本初の「再生可能エネルギーの証券化」を目指すとして話題となった。現段階では、GEエナジー・フィナンシャルサービスなど3社による出資と28金融機関からの借り入れで事業資金を賄い、建設が始まった。ただ、くにうみアセットマネジメントの山崎社長は、「将来のファイナンスの在り方についてはまだ決まっていない」と前置きしつつ、「発電設備が完成して商業運転が始まれば、相対的に事業リスクは小さくなる。そうなれば第2段階として、証券化の仕組みで地域や国民から広く出資を募ることも検討できる」と、将来的な証券化スキームの活用に意欲をみせた。