鹿児島県薩摩川内市甑島(出所:住友商事)
鹿児島県薩摩川内市甑島(出所:住友商事)
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 鹿児島県薩摩川内市と住友商事は10月10日、離島での再生可能エネルギー利用を促進するため、電気自動車(EV)の使用済み電池を再使用(リユース)した大型蓄電池システムを同市甑島に導入する共同実証事業で合意し、協定書を締結した。

 離島のような小規模な電力系統では、太陽光発電など天候による出力変動の急峻な再エネが大量に接続されると電力の需給バランスが崩れ、場合によっては停電に陥る可能性がある。蓄電池システムは、急峻な出力変動を平滑化する効果があるが、導入コストの高さが課題になっている。本事業では、経済性の高いEVリユース蓄電池を用いた低コスト事業モデルを確立し、自治体が主体となって蓄電池システムを設置し再エネの接続インフラを整備する「自治体モデル事業」を構築・検証する。事業の経済性を成立させることによって、持続的に再エネの導入拡大を後押しする。

 本事業の実施には、薩摩川内市から九州電力に協力を要請し、技術的側面からの助言などのサポートを得る予定で、他の離島などにも展開できる事業モデルを目指す。

 薩摩川内市は、「次世代エネルギービジョン」を制定し、市民のためになる次世代エネルギーの活用に取り組んでいる。甑島では、「エコアイランド化」による観光振興や市民生活の利便性向上を目標に掲げ、これまでEVレンタカーや超小型EVモビリティを実証的に導入している。本事業によって、甑島に再エネが導入される環境を整備し、島全体のゼロ・エミッションに向けた取り組みを後押しする。

 また、本事業では、EVリユース蓄電池システムと同時に、災害時などにも活用できる太陽光発電システムを甑島の2カ所の避難施設に設置する。市は、これによって甑島の防災機能を強化し、石油燃料だけに依存しない多元的な電力供給インフラを構築する。

 住友商事は、大阪市にメガソーラー(大規模太陽光発電所)とリユース蓄電池システムを併設し、太陽光発電の出力変動を平滑化する実証を進めている。今回の実証事業は、こうした実証で蓄積したノウハウを活かし、住友商事九州と連携して蓄電池システムなどを甑島に構築する。環境省の補助金を活用し、2015年度上半期中の完成を目指す。EVリユース蓄電池は、住友商事と日産自動車との共同事業会社「フォーアールエナジー」から供給を受ける予定。住友商事は、経済性の高いリユース蓄電池システムを活用した新たなビジネス機会の創出に取り組んでおり、国内外の離島・マイクログリッドなどに新しい電力関連事業として展開することを目指す。