SiCに代表されるパワーデバイスのスイッチング速度向上で、インバーターが発するEMI雑音が顕在化してきた。その対策を効果的に打つためには設計段階でシミュレーターを使った解析が欠かせない。
東芝の電力システム社 電力・社会システム技術開発センターの前川 佐理氏(電機・電池応用・パワエレシステム開発部 パワエレシステム技術担当 主務)が、太陽光発電システムに使う系統連係用3相400Vインバーターをモチーフとして、シミュレーターを使ったEMI雑音解析に関して講演した(写真)。この講演は、「Automotive Simulation World Congress 2014/ANSYS Electronics Simulation Expo 2014」(アンシス・ジャパンが2014年10月9日と10日に東京で開催)で行われた。
同氏らは、モチーフのインバーターで発生するEMI雑音の実測値とシミュレーション結果を比較した。CISPR11 Class Aで既定された15k~30MHzにおける雑音を比較したところ、両者の誤差は±15dBに収まった。誤差が小さくできたのは高精度モデルによるところが大きいとして、講演では主にモデリングに関して説明した。
パワーデバイスはSiCのJFET
最初に同氏は、モチーフのインバーターを含むシミュレーション系/実測系を紹介した(図1、図2)。インバーターは2レベルの3相で、ハーフブリッジモジュール3つから成る。パワーデバイスは、SiCのJFETである。比較に使った系では、太陽電池パネルは直流電源、系統電力網は負荷抵抗としている。LISN(line impedance stabilization network)に入るEMI雑音を比較した。