九電管内の太陽光・風力の申し込み状況(出所:九州電力)
九電管内の太陽光・風力の申し込み状況(出所:九州電力)
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 九州電力は9月24日、九州本土の再生可能エネルギー発電設備に対する送電系統への接続申込みの回答をしばらくの間、保留すると発表した。対象となるのは固定価格買取制度(FIT)の対象となっている再生可能エネルギー発電設備。ただ、家庭用の太陽光など低圧10kW未満については、当面対象外とする。また、10kW以上の低圧でも、工事費負担金請求書を送付済みのもの、高圧・特別高圧でも、接続契約申込みに対して、系統連系承諾通知書を送付済みのものは対象外となる。

 加えて、回答保留期間中においても、太陽光・風力発電設備への蓄電池の併設や、バイオマス・地熱・水力発電の出力調整など、昼間に電力を送電系統に電力を流さない方策を発電事業者が提案する場合は、個別に協議するとしている。

 九州電力は、回答保留に至った背景について、「2014年3月の1カ月間で、それまでの1年分の申込み量に相当する約7万件もの太陽光の接続契約申請が集中した」ことを挙げる。そして、その後の申請も加えると、「今年7月末現在の申請量が全て接続された場合、近い将来、太陽光・風力の接続量は約1260万kWにも達することが判明した」とする。

 九州電力は、FIT開始後の太陽光発電の申請急増を受け、2013年3月に風力と太陽光発電の2020年度での導入見通しを、それまでの300万kWから700万kWに大幅に上方修正していた。内訳は風力100万kW、太陽光600万kWという想定だった。2013年12月の「メガソーラービジネス」誌のインタビュー(関連記事)で、九州電力・経営企画本部の能見和司部長は、「700万kWという数字はこれ以上、連系しないという『限度』ではなく、あくまで『見通し』だ」と述べている。「1260万kW」という7月末現在の申請量が、いかに予想を大幅に上回る数字かが伺える。

 例えば、12月初旬の九州管内における最大需要は約1300万kWになる。ただ、1300万kWという九州管内のピーク需要は夕方6時頃で、太陽光が最も発電する昼の電力需要は1100万kW程度になる。一方、太陽光発電の実際の発電量は、設備容量の3分の2程度なので、700万kWの場合、九州全土が晴れると500万kWが連系してくる。つまり、太陽光発電の総需要に対する構成比は、半分程度になる。ただ、九電は、構成比の半分程度までなら、技術的になんとかなるとみていた。

 だが、1260万kWとなると、実際の発電量がその3分の2としても約840万kWとなり、12月の昼の総需要(1100万kW)に対する構成比は、8割近くになる。九電は、24日のリリースで、「冷暖房の使用が少ない春や秋の晴天時などには、昼間の総需要(約800万kW)を太陽光・風力による発電電力が上回り、電力の需要と供給のバランスが崩れ、電力を安定してお届けすることが困難となる見通し」と説明している。九電が、「保留期間中でも、蓄電池付きの太陽光・風力の協議には応じる」のはこうした背景がある。

 今後、これまでに設備認定された太陽光発電設備のうち、実際にどの程度まで建設に至るのか、という点がまず問題になる。加えて、北海道や沖縄本土と同様、蓄電池などの電力系統用のエネルギーストレージ、太陽光や風力の出力変動に対応した需要側のADR(自動デマンドレスポンス:需要応答)など、系統安定化を実現する技術革新への期待が高まりそうだ。