産業用機器のライフタイムは長い。一方でプロセッサーICの進化の速度は速い。両者間の調整を取るものの1つが、プロセッサーICとその周辺を実装したサブボード(CPUモジュール)である。機器のメーンボードにCPUモジュールを組み合わせることで、メーンボードの寿命を延ばして、かつ最新のプロセッサーICが利用できるようにする。

図1●小川章氏 日経エレクトロニクスが撮影。
図1●小川章氏
日経エレクトロニクスが撮影。
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図2●多種類のロボットを1つのコントローラーで制御 デンソーウェーブのスライド。
図2●多種類のロボットを1つのコントローラーで制御
デンソーウェーブのスライド。
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図3●1/3にサイズダウンした デンソーウェーブのスライド。
図3●1/3にサイズダウンした
デンソーウェーブのスライド。
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図4●ディスコンなどに泣かされてきた デンソーウェーブのスライド。
図4●ディスコンなどに泣かされてきた
デンソーウェーブのスライド。
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図5●生活支援ロボットの規格が国際標準化 デンソーウェーブのスライド。
図5●生活支援ロボットの規格が国際標準化
デンソーウェーブのスライド。
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 業界でよく使われているCPUモジュールには複数の種類(ファクター)がある。その1つが「COM Express」。COM Expressモジュール大手の台湾ADLINK Technology社(日経テクノロジーオンライン関連記事)の日本法人「ADLINKジャパン」が2014年9月11日に東京でプライベートセミナー「進化する組み込みシステム」を開催した。ADLINKサイドの講演に加えて、デンソーウェーブとアンリツの2社からユーザー講演があった。

 デンソーウェーブから登壇したのは、小川章氏(制御システム事業部 技術1部 技術5室 室長)である(図1)。同社では自動車の製造に使う製品を中心にさまざまな産業用ロボットを開発・販売している。軸数で言えば1~6軸、可搬重量で言えば2~20kgのロボットだという。多岐にわたるロボット製品を開発するが、制御するコントローラーは1つにして開発の効率化を図っている(図2)。

 現在のコントローラー「RC8」は重さが12kg、容積が12.4ℓで、1世代前の「RC7M」比で1/3にサイズダウンした(図3)。「RC7Mも十分小さかったが、RC8はさらに小型化した。世界最小のロボットコントローラーと自負している」(小川氏)。デンソーウェーブではコントローラの開発に当たり、自らはロボットに直接関連した部分に集中し、そのほかの部分は外部から調達することも視野に入れる。

 その考えの下、プロセッサーやCPUは外部から調達してきたが、ディスコン(生産中止)などに泣かされてきた(図4)。1998年の「RC5」ではカードPCを使っていたが、規格が消滅し、それに伴い製品がなくなってしまった。そこで、次の「RC7M」では専用ボードを開発した。ところが、今度はプロセッサーICがディスコンとなり、ボードの再設計をするハメになった。その次の(現在の)RC8では、市販のCPUモジュールを導入し、それをメーンボードに載せることにした。

 その選定では、規格の消滅やプロセッサーICのディスコンがないような信頼できる規格かどうかを評価した。また同氏によれば、CPUモジュールによってはメディア処理や通信処理に重きを置いたものもあるが、ロボット制御ではリアルタイム処理が重要である。規格の信頼性やリアルタイム処理性などを考慮して選んだ規格(フォームファクター)がCOM Expressだった。COM Expressモジュールのメーカーは複数あったが、対応の良さなどからADLINKを選んだという。

 講演の最後に、ラインに据える産業ロボットのほかに今後期待する市場として、医療、介護、教育、モビリティといった生活を支援するロボットを挙げた。それを後押しする国際規格「ISO 13482」(日経テクノロジーオンライン関連記事)が2014年2月に発行されたことを紹介した(図5)。