2014年9月9日に東芝が開催した、四日市工場 新製造棟の竣工・起工式。式典終了後の記者会見や囲み取材で質問が集中したのは、ポスト微細化世代を担う3次元構造のNANDフラッシュメモリー(3次元NAND)に関するものだった(関連記事1同2)。

記者会見に登壇した東芝社長の田中氏
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 NAND最大手の韓国Samsung Electronics社は、2014年5月に3次元NAND「V-NAND」の32層積層品の量産を開始している(関連記事3)。東芝が今回着工した新・第2製造棟で3次元NANDの量産を始めるのは2015年度下期で、Samsung社からは2年近く後れをとる。報道陣からの質問の多くは、この後れをどうとらえているかを問うものだった。

狙いは48層以上か

 「我々は焦っていない。確かに3次元NANDだけを見れば後れているかもしれないが、3次元NANDを売ることに事業の目的があるわけではない。コスト競争力のある製品を適切な市場に向けて売ることが何よりも重要だ」。東芝 代表執行役社長の田中久雄氏は自信に満ちた表情でこう答えた。

 東芝は当面、2014年4月に量産を始めた15nmプロセス品で勝ち続けられると踏む(関連記事4)。業界最小の設計ルールとチップ面積を実現し、「競合他社の3次元NANDにコスト競争力で勝る」(田中氏)からだ。15nmは「微細化の物理限界で、これ以上微細化しようとすれば膨大な投資が必要になる」(同氏)。微細化は15nmで打ち止めとする方針である。

 東芝が3次元NAND「BiCS(Bit Cost Scalable)」を量産する段階では「15nmプロセス品よりもコスト競争力のある製品になる」(同氏)。すなわち、Samsung社が量産中の32層積層を大きく上回る積層数を実現する考えだ。具体的な計画は明らかにしていないが、48層またはそれ以上を狙っているもようである。