東芝は、超低消費電力のマイコンに向けた新型トランジスタ技術を開発した。マイコンの消費電力を1/10以下に低減でき、現行の標準トランジスタ(MOSFET)と同様のCMOSプロセスで製造できる。同技術を搭載したマイコンを2017年に製品化することを目指す。想定する用途は、電池駆動型のモバイル機器やウエアラブル端末、センサーネットワーク端末などだ。

 2014年9月8~11日に開催される半導体デバイス技術の国際会議「SSDM(International conference on Solid State Devices and Materials) 2014」(茨城県つくば市)で3件の関連発表を行う。うち2件は、グリーン・ナノエレクトロニクスセンター(GNC)による「グリーン・ナノエレクトロニクスのコア技術開発」プロジェクトにおける産業技術総合研究所(産総研)との共同成果である。

動作電圧を0.5V以下に

 東芝が開発したのは、トンネルFET(tunnel FET:TFET)と呼ぶ電界効果型トランジスタ。電子のバンド間トンネル現象を利用してオン/オフを制御するトランジスタで、MOSFETのソース電極とドレイン電極の電導型(pまたはn)を相補的にすることで実現できる。

 TFETの特徴は、MOSFETに比べて急峻なオン/オフ特性が得られる点にある。MOSFETでは電子の熱拡散の影響により、オン/オフ特性の立ち上がりの急峻さを示すSファクタを約60mV/桁よりも小さくできない。これに対し、TFETでは60mV/桁を下回るような、非常に小さいSファクタが得られる。

MOSFETとTFETの動作原理の違い
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 結果として、TFETは非常に低い電圧で動作させたり、オフリーク電流を劇的に小さくしたりすることが可能だ。例えば動作電圧は「MOSFETの1/2以下、具体的には0.5V以下を狙える」(東芝 セミコンダクター&ストレージ社 半導体研究開発センター 新規デバイス技術開発部 デバイス技術開発主査の川中繁氏)。オフリーク電流はMOSFETに比べて約2桁下げられる可能性があるという。動作電圧が低いという特徴から動作時電力を低減でき、オフリーク電流が小さいという特徴から待機時電力を低減できる。

超低消費電力のポテンシャルを秘める
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