MRSA感染皮膚腫瘍モデルのマウス
MRSA感染皮膚腫瘍モデルのマウス
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ALAを投与し、PDTを施す
ALAを投与し、PDTを施す
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創の面積の縮小率
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 大阪市立大学の研究グループは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染した皮膚潰瘍を、天然アミノ酸(5-アミノレブリン酸:ALA)の全身投与とLED光を用いた光線力学療法(PDT)で治療することに成功した(リリース)。新たな耐性菌を生じないことから、細菌感染治療の新たな手法として期待できるという。SBIファーマと共同研究を進めており、MRSA感染皮膚潰瘍を対象とする前臨床試験を行う計画である。

 近年、抗菌薬に対する耐性を持つ菌(耐性菌)の出現が世界的な問題となっている。代表例が、MRSAである。MRSAに感染した皮膚潰瘍は、感染していない場合に比べて治癒しにくく、MRSAが感染することで傷が治らずに死亡するケースもある。MRSA治療に有効だった抗生物質「バンコマイシン」の耐性を獲得したMRSAも出現している。こうした状況から、新種の耐性菌を発生させることのない、抗菌薬に頼らない治療法の開発が求められている。

 研究グループは今回、MRSA感染した皮膚潰瘍をマウスの背部に作製。光感受性を与える物質としてALAを全身投与し、波長410nmの青紫LED光源を用いたPDT(photodynamic therapy)を施した。PDTは光感受性物質を標的組織に集積させた後、特定波長の光を照射することで生じる活性酸素によって標的細胞(細菌)を死滅させる治療法。耐性菌を生じないのが特徴だ。検証の結果、MRSAは減菌し、MRSAに感染していない潰瘍と同等の治癒効果が得られた。ALAを用いたPDTが、耐性菌を作らない新たなMRSA感染治療法になり得ることを示したことになる。

 この研究の成果は、米国のオンライン科学誌「PLOS ONE」に掲載された(掲載ページ)。論文タイトルは「Photodynamic therapy using systemic administration of 5-aminolevulinic acid and 410-nm wavelength light emitting diode for methicillin-resistant Staphylococcus aureus infected ulcers in mice」(マウス背部のMRSA感染皮膚潰瘍に対する5-アミノレブリン酸と410nm LEDを使用した光線力学療法)。