検査の流れ
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試験紙に着色したラインの濃さで判定
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 田中貴金属工業は、糖尿病を約10分で簡易検査できるスクリーニングキットを開発した。糖尿病患者が急増中の新興国で現地企業とパートナー契約を結び、契約先を通じてスクリーニング検査薬として販売する。まずは中国と台湾、インドで2015年に発売し、その後、ロシアやブラジル、メキシコ、バングラデシュなどでも発売する計画だ。販売開始5年後に、年間1200万個の販売を目指す。

 開発した「PersonalA1c(パーソナルエーワンシー)」は、指先や歯茎から微量の血液を採取するだけで、血糖状態の指標であるHbA1cの濃度を約10分で検査できる。金コロイドを用いた「イムノクロマト法」を用いるため、特別な装置や技術を使わずに、短時間かつ低コストで糖尿病を簡易に検査できる点が特徴だ。検査キット中の試験紙には、検査結果に応じて着色する2つのラインがあり、着色の濃さを目視で比較することで、HbA1c値を簡易的に判定できるという仕組み。

 PersonalA1cの販売にあたって、田中貴金属工業は臨床試験を経て、各国のパートナー企業にPersonalA1cの製造ノウハウを供与する。一部部材の製造と供給も行う。パートナー企業はその他の部材の調達や製造、組み立てを担当する。

 中国と台湾向けでは既に台湾Abnova社とパートナー契約を結んでおり、Abnova社はPersonalA1cの臨床試験を始めるための承認を取得済み。臨床試験は中山医学大学付属病院(台中市)で行う予定で、HbA1c迅速定性検査キットとしての再現性や正確性を200症例について評価する。

 国際糖尿病連合の調査によると、2013年時点で世界の糖尿病患者数は3億8200万人。有効な対策を施さなければ、2030年までに5億9200万人に達すると予測されている。国別では、成人の糖尿病患者人口は、2013年時点で首位が中国(9840万人)、2位がインド(6507万人)、3位が米国(2440万人)。この順位は2030年においても変わらないと見込まれている。