山形大学 教授で同大学 有機エレクトロニクス研究センター(ROEL)副センター長の時任静士氏の研究グループは、非常に薄い樹脂シート上に有機トランジスタを含む電子回路をオール印刷技術で作製。論文を学術誌「Nature Communications」に発表した(時任研究室のページ時任氏への関連インタビュー)。

 この電子回路は、1μm厚のParylene-Cという樹脂膜上に形成した。回路全体でも厚さは2μm以下と非常に薄く、単位面積当たりの重さは、1m2当たりで2gと、ほとんど重さを感じない水準である。

 有機TFTの飽和領域でのキャリア移動度は最大1.0cm2/Vs、電流のオン・オフ比は106で、アモルファスSiを用いたTFTに匹敵する。曲率半径140μmという極めて鋭角で折り曲げても、オン電流は1.6%、キャリア移動度は3.9%の変化にとどまった。オン・オフ比は105以上を維持したという。

 想定する用途は、体に貼り付けて利用するヘルスケア用のセンサーなど。首や肘など複雑な曲面への貼り付けや曲げ伸ばしにも十分対応可能のもようだ。

 この技術で、10cm角の樹脂シート上に400個の有機TFTアレーを形成し、その1/4のTFTをランダムに選んで評価したところ、キャリア移動度とそのバラつきは0.34±0.15cm2/Vsの間にほぼ収まった。

 時任氏は2014年6月に開催されたディスプレー技術の国際学会「SID 2014」で、32.5mm角で125μm厚のPENシート上に10×10個の有機TFTアレーを作製したと発表している。その際のキャリア移動度とそのバラつきは、1.1±0.17cm2/Vsとさらに高い水準になっている。