発電単価14円/kWh・7円/kWhを満足できる初期投資可能限度額/試算結果-1(出所:「PVシステムのコストの試算から見えてくる研究開発の方向性」小西正暉ら)
発電単価14円/kWh・7円/kWhを満足できる初期投資可能限度額/試算結果-1(出所:「PVシステムのコストの試算から見えてくる研究開発の方向性」小西正暉ら)
[画像のクリックで拡大表示]
発電単価14円/kWhを満足できる初期投資可能限度額/試算結果-2(出所:「PVシステムのコストの試算から見えてくる研究開発の方向性」小西正暉ら)
発電単価14円/kWhを満足できる初期投資可能限度額/試算結果-2(出所:「PVシステムのコストの試算から見えてくる研究開発の方向性」小西正暉ら)
[画像のクリックで拡大表示]

 茨城県つくば市で6月24日と25日、産業技術総合研究所の主催で「AIST 太陽光発電研究・成果報告会 2014」が開かれた。同報告会のトピック講演で、産総研・太陽光発電工学研究センターの小西正暉氏が「PVシステムのコストの試算から見えてくる研究開発の方向性」と題して講演し、変換効率の向上や長期安定性など4つの方向性を示した。
 
 同講演では、「太陽光発電システムの発電単価は、家庭用電力の市場単価(約20円~/kWh)と伍するまでになった」との認識に立ち、国の掲げた次の発電単価の目標である第2段階のグリッドパリティ「14円/kWh」、第3段階のグリッドパリティ「7円/kWh」を見据えた研究開発の方向性を分析した。グリッドパリティとは、電力の市場価格より安くなる発電単価を示す。現状の太陽光の発電単価は、家庭用電力のグリッドパリティを達成しつつあり、業務用電力(14円/kWh)、産業用電力(7円/kWh)を下回ることが次の目標になっている。

 分析では、IRR(内部収益率)0%の前提で、運転維持費を現状の8000円/kWh・年から同6000円に下げ、初期投資可能限度額を10数万円/kWに抑えると、発電単価14円/kWhが実現できる(図中1)。ただ、稼働年数を20年から30年に延長すると初期投資可能限度額が20万円/kWを超えても発電単価14円/kWhを達成できる(図中2)。さらに、発電単価7円/kWhを達成するには、運転維持費、系統接続費用、土地造成費用を大幅に圧縮する必要がある(図中3)。

 運転維持費の低減は、初期投資可能限度額を大きく改善し(図中4)、現行の初期投資(30万円/kW)近くでも、運転維持費を4000円/kW・年に低減し、かつ稼働期間30年を達成すれば、発電単価14円/kWhは可能という(図中5)。また、太陽光パネルの劣化率が年率1%を超えると初期投資可能限度額に大きく影響する(図中6)ことや、メンテナンスの不備も初期投資可能限度額に多く影響する(図中7)ことが示された。

 小西氏は、こうした分析を基に、太陽光パネルから見た研究開発の方向性として、(1)変換効率をさらに高めて設置工事費を低減すること、(2)長期安定性の向上、(3)低コスト化、(4)施工を容易にできる構造・形状、の4点を挙げた。