技術センターに竣工したZEB実証棟(出所:大成建設)
技術センターに竣工したZEB実証棟(出所:大成建設)
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外壁ユニットに組み込む太陽光パネル(出所:大成建設)
外壁ユニットに組み込む太陽光パネル(出所:大成建設)
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三菱化学の有機薄膜太陽電池(出所:大成建設)
三菱化学の有機薄膜太陽電池(出所:大成建設)
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 大成建設は6月16日、横浜市戸塚区にある技術センターに、建物単体で年間の1次エネルギー収支がゼロになる「ZEB 実証棟(ZEB:ゼロ・エネルギー・ビル)」を竣工したと発表した。ZEB実証棟では、新しいシステムの開発や、従来技術の効率的な組み合わせにより、徹底的な省エネルギーに取り組み、年間のエネルギー消費量を一般的なオフィスビルと比べ、75%削減する。一方で、消費するエネルギーの残り約25%は、有機薄膜太陽電池を使った「発電する建物外壁ユニット」を採用し、消費エネルギーと生成エネルギーの収支がゼロになることを目指す。

 従来、国内外のZEBは、エネルギー負荷の小さい低層建物や、郊外の広い敷地を活用して、建物外で創り出したエネルギーを取り込むことによりゼロエネルギーを達成することが多かった。大成建設のZEB実証棟は、超省エネと建物本体に設置した創エネ設備により年間エネルギー収支をゼロにすることを目指す。都心の狭小なエリアでもZEBを実現できる「都市型ZEB」の実証モデルと位置づけている。

 「都市型ZEB」を実現するためには、太陽光でより多くの発電量を確保する必要がある。屋根や屋上設置に加え、壁や窓などの側面を有効活用することが必須になる。しかし、外壁に設置するには、サイズや色など建物に求められるデザインに対応できるフレキシブル性や軽量性、また、建物の長寿命化に伴う機器更新の容易さなどが求められる。これまで本格的な外壁対応型の太陽光パネルは実用化の段階になかったという。

 実証棟に採用する「有機薄膜太陽電池外壁ユニット」は、大成建設と三菱化学が共同開発した。薄くて軽く、色の自由度が高い三菱化学の有機薄膜太陽電池を使った。三菱化学は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業「有機系太陽電池実用化先導技術開発」に採択され、有機薄膜太陽電池の実証実験を進めてきた。

 日本ではエネルギーの約40%がオフィスビルなどの建物で消費されている。オフィスビルのエネルギー収支をゼロにすることは、国内全体のエネルギー消費量を削減し、CO2の排出量を大幅に削減することになる。大成建設は、オフィスビルが集中する都市部に建設する建設物をZEB化することを目指し、技術開発を推進していくという。