図1◎ホイールのメインライン
図1◎ホイールのメインライン
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図2◎エンジンの組付工程
図2◎エンジンの組付工程
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図3◎地下ピットに設置された昇降機
図3◎地下ピットに設置された昇降機
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 コマツは、同社粟津工場内に新組立工場を建設、2014年5月に量産を開始した。同組立工場はホイール(ホイールローダーなどタイヤで走行する建機)とクローラー(ブルドーザーなどキャタピラーで走行する建機)の生産を行うが、今回量産を始めたのはホイールのみ(図1)。クローラーの組み立ては同年7月から量産を開始する。同社代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)の大橋徹二氏は竣工式において、「新組立工場をはじめとする国内生産拠点は、競争力を生み出す世界のマザー工場の役割を担っている」と強調した。

 新組立工場は従来の同社の組立工場と比べ、生産性を約15%向上させ、生産コストを15%削減している。一般に建機工場の生産ラインの特徴は、(1)多品種少量生産(稼働した新ラインは51機種のホイールを作り分ける)、(2)大型部品の組み付けが多い、(3)人が関与する作業が多い、など。そのために「新組立工場では、部品のモジュール化を進めて作業の共通化を図ること、さらには、部品の配送物流を効率化して作業性を高めることを狙った」(同社常務執行役員粟津工場長の山下修二氏)。

 例えば、新組立工場の生産ラインは、メインラインに複数のサブラインを組み合わせることで、インラインの作業の共通化を進めている。メインラインは、サブラインや別工場で組み立てたエンジンやモジュール部品を車体フレームに取り付ける役目に集中している。そのため、多品種少量生産でも、高い品質を安定して確保できるとする。また、メインラインは、作業者が作業する床面が、ラインの流れと同期して動くので作業者は作業に集中することができる。

 建機の製造はさまざまな大型部品をクレーンで車体フレームの上まで運び、人手で組み付けていくのが基本だ(図2)。新組立工場はクレーンを2段構造にすることで、1つの工程で2つのクレーンを使えるようにした。その結果、フレームの左右から同時に部品を搬送できるようになり、作業効率を高められた。

 加えて、クレーンを駆動するモーターやリフターといった設備、空調システムなどを地下のピットに設置することで、工場床面の段差をなくしている(図3)。その結果、組み付ける部品を、台車でラインのすぐそばまで搬送できるようになり、作業効率が大きく向上したという。段差がないために負担がかかる姿勢での作業を大幅に減らすこともできたとする。