●おひさまエネルギーファンドの分別管理の現状と、理想形(出所:おひさまエネルギーファンド)
●おひさまエネルギーファンドの分別管理の現状と、理想形(出所:おひさまエネルギーファンド)
[画像のクリックで拡大表示]

 証券取引等監視委員会は5月16日、おひさまエネルギーファンド(長野県飯田市)を検査した結果、法令違反などの事実が認められたため、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、行政処分を行うよう勧告したと、発表した。

 固定価格買取制度(FIT)の施行以来、NPO(非営利組織)と連携するなど、一般市民を対象に再生可能エネルギー発電事業に投資を募るファンドが増えている。そんななかでも、おひさまエネルギーファンドは、FIT施行以前から活動していた再エネ・市民ファンドの先駆けとも言える存在。2013年11月までに、計7種類14本のファンドを商品化し、出資を募っていた。同委員会によると、これらのファンドのほとんどで、おひさまエネルギーファンド自身のほか、同社と実質的に一体と認められる関係会社が営業者を務めており、おさまエネルギーファンドは、ファンドの運用状況を把握できる状況にあったという。

 同委員会による検証の結果、これらのファンドにおいてファンド資金の私的流用は認められなかったものの、少ない人的資源を再生可能エネルギー事業に係る業務等に費やす状況となっており、資金管理に係る業務について、代表取締役の原亮弘社長一人で集中的に管理することとなっていたため、ファンド資金の「分別管理」と、当局への報告に関して、不適切な状況が認められたという。

 「分別管理」とは、営業者の固有財産とファンド資金を分別して管理することで、金融商品取引事業者には、金融商品取引法で義務付けられている。おひさまエネルギーファンドは、ファンドの出資金であることが名義により明らかな口座を開設しておらず、出資金は、各営業者名義の口座に振り込んでいた。

 さらに、契約締結前に交付した書面などにより、ファンド立上げ直後に事業利益が発生していない期間などにおいては現金を分配できないとしていたにもかかわらず、原社長は、「業務多忙で個別のファンド収益の算出が困難である」として、当初の計画として掲げた目標に概ね沿った金額の現金を分配していた。事業利益が発生しておらず、契約上、現金を分配できない事業状況であったにもかかわらず、目標に沿った現金を分配したことに伴い、一部のファンド間で資金の貸借が行われてファンドからの現金分配に充当するなど、ファンド出資金の管理に不適切な状況が認められたという。

 おひさまエネルギーファンドは、分別管理が確保されていない状況を知りうる立場にあったにもかかわらず、管理態勢を見直すことなく、新たなファンドを商品化し、資金を募集していた。加えて、関東財務局長に対し、ファンドの分別管理に関する事項につき、「顧客の出資金および運用が、営業者の固有財産とは区分されたファンドの管理口座において管理されていることが確認された」との虚偽の報告を行っていた。

 こうした証券取引等監視委員会の発表を受け、おひさまエネルギーファンドの原亮弘社長は、5月17日に以下のような見解を公表した。

 分別管理が不徹底との指摘に関して、「事業会社を分けて会社ごとに口座があることで、分別管理されている、という認識でしたが、これでは不十分であり各事業会社の中でさらに、ファンド資金用、会社資産用の口座を分けるべきとの指導でした。この指導を真摯に受け止め、早急に改善いたします」とのコメントを出した。

 また、ファンド間の資金の貸借に関しては、「税理士等の確認を受けており、特段問題はないとの認識でしたが、事業会社内でファンド資金用口座を分けていれば起こらない事象であり、分別管理の不徹底との指導がありました。上記指導を含めて、早急に改善してまいります」とのコメントを出した。

 なお、同社によると、これまで実施した現金分配について変更はなく、実施中のファンド事業は滞りなく継続していくとしている。

■変更履歴
公開当初、記事中に太陽光発電設備の写真を掲載し、「図1●14本のファンドの1つに組み込まれた小田原市の太陽光発電所」との説明文を入れていましたが、掲載した小田原市の太陽光発電の写真は、おひさまエネルギーファンドとは、無関係のものでした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2014/5/19]