自動車分野ではデンソーとタッグ

 発表会では、JINS MEMEの主要な用途例を挙げた。例えば、自動車運転時に、ドライバーの眠気の兆候を察知し、装着者に警告を出す用途を想定する(図12)。眠気が増すと人の眼は特有の動きを示すので、兆候を察知できるという。そのアルゴリズムを、芝浦工業大学 工学部電子工学科の加納慎一郎氏と共同で開発した。また、運転分野においてはデンソーや慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科と、眼電位センシングを利用した次世代の運転支援技術の研究を始めている。

図12 自動車分野の応用
"図12 自動車分野の応用

 この他、代表的な用途として、オフィスやフィットネスを挙げた。オフィスでの作業時の疲れや集中度を割り出し、それを装着者に提示することで、自分の疲労を自覚して管理してもらうことを狙う(図13)。そこで、独自の疲労指数「me(ミー:Mental Energy)」で評価する。meが大きいほど疲労が小さく、低いほど疲労が蓄積していることを示している。

図13 オフィス分野の応用
"図13 オフィス分野の応用

頭の動きから体軸を推定

フィットネスでは、内蔵する加速度センサーやジャイロセンサーを活用する。これらのセンサーから頭部の動きを検知。頭部の動きから、体の重心や体軸などを推定する(図14)。腕輪型や腕時計型の機器に比べて、より正確に歩数や活動量を計算できるとみる。

図14 フィットネス分野の応用
"図14 フィットネス分野の応用

 加えて、専用のアプリケーションソフトウエアによって、ランニングや歩行中の体の傾きやブレを把握し、体軸や体幹を意識したトレーニングを実施しやすいとする。また、スポーツ選手の体軸の状態から筋肉バランスの崩れを察知し、ひざの故障を未然に防げる可能性もあるという。認知症の患者も体軸のブレが大きくなるので、その診断などに活用できるとみている。体の動きの判定技術については、慶應義塾大学 スポーツ医学研究センター 准教授の橋本健史氏に協力を仰いでいる。

 この他、JINS MEMEでは、装着者の状況把握だけでなく、視線入力操作への応用も視野に入れている。発表会に併設した体験ブースでは、視線の動きによってスマートフォンの画面を切り替えるデモを見せていた(図15)。

図15 体験ブースの説明パネル
"図15 体験ブースの説明パネル