眼電位から眼球運動を検知

 人の眼球では、角膜側で正の電荷を、網膜側で負の電荷を帯びている。今回その電位差である「眼電位」を測定することで、まばたきや眼球運動を検知する(図3)。

図3 眼電位を測定
図3 眼電位を測定

 眼電位センサー技術の開発で中心的な役割を担ったのが、「脳トレ」で著名な東北大学 加齢医学研究所 所長の川島隆太氏である(図4)。約4年前に、ジェイアイエヌの田中氏が川島氏に共同研究を持ちかけた。

図4 川島隆太氏
図4 川島隆太氏

 川島氏によれば、医療用途の眼電位センサーでは、顔に少なくとも4つ、その他の体にも電極を取り付ける必要があるという(図5)。

図5 従来の眼電位センシング
図5 従来の眼電位センシング

 これに対して、JINS MEMEでは、顔につける電極の数は3つ(図6)。そのため、「三点式眼電位センサー」と呼ぶ。

図6 顔につける電極の数は3つ
図6 顔につける電極の数は3つ

 3つの電極のうち、2つは鼻パッドに、1つは眉間と接触する部分に配置している(図7)。

図7 3つの電極のうち、2つは鼻パッドに、1つは眉間と接触する部分に配置
図7 3つの電極のうち、2つは鼻パッドに、1つは眉間と接触する部分に配置

 このほかつるの部分にも電極があり、ここで検知した電位を参照用として利用するという(図8)。いずれの電極も、周囲からは分からない位置にあるため、一般的なメガネと外観は同じである。川島氏によれば、三点式眼電位センサーを実現する上で難しかったのは、検出する信号(電位)のS/Nを高めること。詳細を明かさないが、顔の皮脂の影響を受けにくい電極材料を選んだり、信号処理技術を高めたりして、実現したという。2015年春の発売までに、こうしたセンシングの安定性を高めたいとする。「B2B用途であれば、すぐにでも提供できる安定性を実現している。ただし、どんな状況やどんなユーザーでも利用できるようにするB2Cの用途で展開するには、センシングに関する安定性をより高める必要がある」(川島氏)。

図8 つるの部分にも電極
図8 つるの部分にも電極