図1●患者の状態認識技術
図1●患者の状態認識技術
[画像のクリックで拡大表示]
図2●患者の状態と遷移関係
図2●患者の状態と遷移関係
[画像のクリックで拡大表示]

 富士通研究所は、カメラを用いて入院患者のベッドでの起き上がり(起床)、ベッドからの立ち去り(離床)やベッド上での行動を高精度に検知する技術を開発した(リリース)。

 今回同社は、カメラで撮影した患者の頭部を認識して追跡することで、徘徊・転倒の予兆行動である起床・離床を認識するセンシング技術を開発した。加えて、カメラ画像を基に、もぞもぞして眠れていない、暴れているなど、患者の注意すべき行動を可視化する技術を開発した(図1)。この技術では病院や介護施設での質の高い見守りを実現するとともに、看護師の業務負荷を軽減できるという。技術の詳細は2014年6月11日からパシフィコ横浜で開催される「画像センシングシンポジウム SSII2014」で発表する。

 病院や介護施設では、看護師が気付かないうちに入院患者がベッドを離れて徘徊・転倒する事故や、痛みなどで寝つけないなどの状況に看護師が気付くのが遅れることがある。従来用いられていた、人の重さを圧力として検知するセンサーでは、寝返りに反応してしまうなど検知がうまくいかない場合があり、看護師が頻繁に確認する必要があった。今回の技術はこうした課題を克服できる。開発した技術の特徴は以下の通りである。

(1)患者の状態に応じた学習データ選択
 ベッド上での患者の状態を、患者の姿勢に応じて五つに分類し、その遷移関係を定義した(図2)。患者の頭部の見え方は状態に依存するため、あらかじめ状態ごとに頭部の現れる位置を設定し、状態ごとにその位置での頭部の見え方に限定した学習データを作成した。認識時は、遷移関係に基づいて現在の状態と次に起こりうる状態に限定した学習データを使用する。認識に用いる学習データを患者の状態に応じて選択することで、高精度な頭部認識を実現した。

(2)動き情報を利用した誤検出低減
 患者の状態に応じた学習データを選択しても、枕や布団などを誤って認識してしまう場合がある。そこで、患者が起床・離床するときには必ず動きを伴う点に着目し、画像内で頭部の可能性のある複数の領域を頭部候補として抽出した。複数の候補の中から起床・離床と思われる動きを行った頭部候補を頭部と確定し、動きがない場合や確定後に動きが止まった場合は、再び頭部候補に戻して、改めてすべての頭部候補の観測を継続する。こうすることで、枕や布団などを誤認識しても起床・離床とは異なる動きとなるためすぐに頭部の確定が解除され、患者が動いたときに正しい頭部を認識できる。

(3)注意すべき患者の動きの可視化
 医療従事者などの意見を参考に、通常の行動・動きと注意すべき行動を定義した。その二つの行動を、画像から算出した患者の動きの大きさ、回数などから判別する。可視化では、就寝中の通常の動き以外の行動と判別された患者の動きを丸印で表し、この行動での動きの大きさを5段階の色で、一定時間内で検知された頻度を丸印の大きさで表現した。これにより、注意すべき患者行動を簡単に把握することができる。