開発プロジェクトメンバー。左から順に、プロデューサーの残間里江子氏、片山工業 wbc 東京オフィスの岩越哲也氏、 同プロジェクトリーダーの片山有紗氏、井上オフィス代表の井上雅雄氏、片山工業 代表取締役社長の片山昌之氏、コピーライターの岩崎俊一氏、グラフィックデザイナーの原研哉氏、デザイナー・建築家の鄭秀和氏
開発プロジェクトメンバー。左から順に、プロデューサーの残間里江子氏、片山工業 wbc 東京オフィスの岩越哲也氏、 同プロジェクトリーダーの片山有紗氏、井上オフィス代表の井上雅雄氏、片山工業 代表取締役社長の片山昌之氏、コピーライターの岩崎俊一氏、グラフィックデザイナーの原研哉氏、デザイナー・建築家の鄭秀和氏
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開発の原点となった井上氏のイラスト
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豊富なカラーバリエーションで幅広い層に訴求
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 自動車部品メーカーの片山工業は2014年4月30日、東京都内で新製品発表会を開催し、立ちこぎ式の電動アシスト三輪自転車「ウォーキングバイシクル」を発表した(関連記事)。「歩くより速く、自転車より手軽に乗れることを目指した」(片山工業)という。登壇した同社 代表取締役社長の片山昌之氏がみせたのは、“健康づくり”と“日本発”へのこだわりだ。

 ウォーキングバイシクルは、レストランチェーン経営などを手掛けるオフィス井上 代表の井上雅雄氏の発想が開発の原点となった。発表会にはその井上氏が登壇。「足が弱った高齢者には、現状では頑張って歩き続けるか、車椅子を使うかという選択肢しかない。その間を埋める乗り物があれば、これまでなら75歳から車椅子を使っていた高齢者が、85歳まで歩き続けられるようになるかもしれないと考えた」と話した。

 井上氏に相談を持ちかけられた片山氏は事業化を決意。2009~2010年に開発を本格始動した。その際のコンセプトは大きく二つあったという。「一つは幸せづくりにつながる健康づくりをサポートすること、もう一つは日本でのモノづくりにこだわり、日本を元気にすること」(片山氏)だ。

 ウォーキングバイシクルは「若い世代から高齢者まで、世代を問わず健康づくりに活用してもらえる」(片山工業 wbc(walking bicycle club) 東京オフィス プロジェクトリーダーの片山有紗氏)と同社は話す。今回のモデルは30~50歳台を中心ターゲットに据えるが、高齢者向けに特化したモデルの開発も進めているという。「今回のモデルは最高時速が25km/時程度だが、高齢者向けには少し速すぎるかもしれない。もう少し速度を落としたモデルも製品化したい」(片山昌之氏)。高齢者の利用を想定し、乗車時に股関節にどのような負荷がかかるかといった研究を進めているという。

 通常の自転車では、こぐ際に上半身を少し前に傾ける必要がある。これに対し、ウォーキングバイシクルは歩くときに近い直立姿勢で乗ることが可能だ。「いつまでも自分の足で歩きたいという、人間の根本的な要求を満たすことにこだわった」(片山昌之氏)。

 日本でのモノづくりにこだわったのは、ウォーキングバイシクルの開発がそもそも「自動車生産の海外移転を受けて、自動車部品以外の製品も手掛けていこうと考えた」(片山昌之氏)結果だからだ。肝となる電動アシストシステムには、海外メーカーの低コスト品をあえて使わず、性能や安全性を保証できる国内メーカー製を採用。その他の部品も国内産を使うことにこだわった。この他にも、溶接の代わりに鋳物を使ったフレームや、自動車並みの高品質塗装を採用するなど、「1台1台がハンドメイド」(片山工業の岩越哲也氏)だという。