職員住宅に設置した出力8kWの太陽光発電システム(出所:神戸大学)
職員住宅に設置した出力8kWの太陽光発電システム(出所:神戸大学)
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 神戸大学や兵庫県立工業技術センターなどの産学グループは、兵庫県南あわじ市の沼島で準備を進めてきた「自然エネルギーを活用した直流電力供給システム」の実証実験を4月から本格的に開始した。同システムは太陽光発電に蓄電池を組み合わせた、直流のマイクログリッド(小規模電力網)を施設内に構築するとともに、一般住宅における消費電力の可視化とデマンドレスポンス(需要応答)によって需要の抑制を試みる。

 沼島内3カ所に太陽光発電システムと蓄電池システムを設置する。それぞれの設備容量は、沼島小学校には太陽光の出力18kWと蓄電池の容量46kWh、沼島総合センターには太陽光10kWと蓄電池23kWh、教職員住宅には太陽光8kWと蓄電池23kWhとなる。太陽光発電が生み出した直流電力を、直流のまま蓄電池に貯め、直流入力仕様にしたLED照明やエアコン、テレビ、パソコンなどの家電機器に使う。交流の系統電力は直流に変換してアシストに活用する。

 実証施設によっては、直流配電盤と交流配電盤を設置して、電気機器によって使い分ける。また、沼島小学校には、1台20kWhの移動式蓄電池を3台配備し、電動走行もできるハイブリッド船や電動車両や電動カートなどに活用する。太陽光発電の直流電力を交流に変換せずに、直流のまま自家消費することで、エネルギーシステム全体として変換ロスを減らす。

 このほか島内の約50世帯にスマートメーター(次世代電力計)を設置したうえで、タブレット端末を配布し、デマンドレスポンス(需要応答)も実証する。スマートメーターに蓄積した電力使用データをタブレット端末に“見える化”(可視化)することで、省エネ意識を喚起するとともに、ポイント制による疑似的な時間帯別料金(TOU)によって需要を抑制し、需給バランスの調整などを試みる。

 同実証事業は2012年3月に環境省の地球温暖化対策技術開発・実証研究事業に採択されたもの。2015年1月まで実施する。委託費は3年間で総額約5億5000万円を見込む。参加するのは神戸大学のほか、兵庫県立工業技術センター、立命館大学、大阪市立大学、三洋電機、中西金属工業、慧通信技術工業、三社電機製作所、富士電機。