コンテナ型蓄電システム「CrystEna」の活用イメージ(出所:日立製作所)
コンテナ型蓄電システム「CrystEna」の活用イメージ(出所:日立製作所)
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 日立製作所は3月28日、同社の蓄電システムが米国の周波数調整(アンシラリー)および容量(キャパシティー)市場を想定した実証実験に参画すると、発表した。同社の地域統括会社である日立アメリカ社と、需要家の電力需要の制御サービスを提供する米Demansys Energy,LLC(米コネチカット州、以下、ディマンシス社)が、日立製の蓄電システムを使った実証試験に合意した。

 採用された蓄電池システムは、コンパクトなコンテナ型蓄電システム「CrystEna」で、実証現場への据え付け準備に着手した。実証試験では、電力系統安定化における蓄電システムの有効性を確認するのが目的で、2014年6月からの2年間を予定する。

 米国では、風力や太陽光発電など、変動の大きい再生可能エネルギーの大量導入に伴い、電源構成に占める比率が増している。その出力変動が周波数の維持に影響を及ぼす懸念があり、適切な系統運用を支援する系統用蓄電システムへの注目が高まっている。加えて、発電と送電、電力系統運用機能が分離されている地域が多く、すでに独立系統運用事業者(ISO)向けに、周波数調整機能の提供や、将来や緊急時に備えた予備の電源容量を提供するサービスが顕在化している。蓄電システムは、こうした周波数調整市場や容量市場の拡大に応える新技術の一つとして検討されている。

 日立の「CrystEna」は、エネルギー貯蔵システムの中核製品の一つとなる蓄電システムで、日立の制御システム、パワーコンディショナー(PCS)、およびグループ会社である日立化成のLiイオン蓄電池などで構成する。蓄電池の長寿命化制御など、システム性能向上とコンパクトな設計により、経済性を高めたという。

 ディマンシス社は、米東海岸で周波数調整および容量市場に参画している。同社の開発した電力監視制御プラットフォーム「Grid Daemon」により、リアルタイムに蓄電池と需要家の電力機器を制御、管理するサービスをISOに提供している。また、容量市場におけるサービス提供も可能で、今回の実証試験から参画する計画という。

 今回の実証試験は、ディマンシス社が全体をとりまとめる。米最大のISOであるPJMがサービス提供しているニュージャージー州で、郊外型ショッピングセンターに日立の「CrystEna」を設置し、PJMの周波数調整市場と容量市場でのパフォーマンスや、売電収入の実績などのデータを2年間蓄積し、電力系統安定化のために蓄電システムの有効性を確認する。すでに、PJMは容量市場における蓄電池の取り扱いに関し、ルール化を進めているという。一方、日立は、実証試験を通じて、蓄電システムを評価し、商用ベースでの製品化に向けて、システムの信頼性や有効性を検証する。
 
 日立は、電力流通システム事業を電力システム事業の中核事業と位置づけており、機器と制御システムなどのIT、パワーエレクトロニクス技術を融合したソリューション事業を拡大する計画だ。今後もさらに様々な施設で「CrystEna」を導入し、制御応答性に優れた蓄電システムとして積極的に拡販する。

 ディマンシス社は、「Grid Daemon」をはじめ、さまざまな商業、産業用途でのサービス提供の実績があり、2012年10月からニューイングランド周波数調整市場でも、発電機を使わず、需要側の負荷を制御して周波数を調整する実証試験に参画している。