脳の活動を可視化
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fNIRS装置を活用
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 中日本高速道路と東京大学 生産技術研究所、「脳の学校」は共同で、高速道路を走行する運転者の脳活動を可視化することに成功した。脳機能近赤外線分析測定(fNIRS:functional near-infrared spectroscopy)装置を車両に搭載することで実現したという。

 交通安全対策の評価は従来、運転後に自分の行動をかえりみて行うアンケートなどの結果を用いていた。しかしこの方法では記憶の誤りや思い込みが避けられなかった。また、脳活動の可視化については、実験設備の制約などから室内で行う方法が主流だった。運転に関する研究もドライビング・シミュレーターに依存することが多かった。

fNIRS装置で脳血流量や脳酸素消費の変化を計測

 研究グループはこれらの課題を解決するために、fNIRS装置を世界で初めて車両に搭載し、走行中の運転者の脳活動を可視化した。高速走行時の運転者の脳にかかる生理的負担を把握することにより、交通事故を引き起こす要因や交通安全対策の効果を把握できるようになるという。

 実験に用いたfNIRSは脳機能画像法の一種。装置が小型で移動可能であり、被験者が体を動かしながら脳機能を計測できる。このため、体を動かす運動に伴う脳循環代謝を解析できるという利点がある。今回の研究では脳血流量だけでなく、脳酸素消費の変化を同時に計測した。これによって運転者の脳活動を多面的に画像化することに成功した。

 今回の技術を用いれば、例えば標識や発光機器の点滅制御を用いた、上り坂での速度低下を防ぐ渋滞対策などの効果を客観的に評価できる。この結果、より効果の高い交通事故防止策を講じることが可能となる。

 中日本高速道路は今後、有識者を交えた「交通情報サービス研究会 脳科学作業部会」を設置する。今回の成果を基に、脳科学の視点から、より効果的な交通安全対策の考案など、安全で走りやすい高速道路を目指して研究を進めていくという。