上場セレモニーの様子
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ロボットスーツHAL
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 筑波大学発のベンチャー企業でロボットスーツ「HAL」などを手掛けるCYBERDYNEは2014年3月26日、東京証券取引所マザーズ(東証マザーズ)に株式上場した(関連記事1)。医療・福祉用ロボットメーカーの株式上場は日本では初めての事例となる。同日午後、東京都内で記者会見を開催し、同社 創業者でCEOを務める山海嘉之氏(筑波大学大学院 教授)が登壇した。

 株式上場について感想を求められた山海氏は「これまで社会に存在しなかった革新技術を、規格作りを含めて展開してきた結果、上場にこぎつけられたことは感無量だ。これまで日本が後手に回りがちだった新市場の創出という取り組みで、ようやく世界に先行できる」と述べた。今後は、医療・福祉に加えてヘルスケアなどを含む包括的な“人支援産業”の創出に努めるとした。

 上場に伴って約30億円(当初の想定株価で算定)の資金を調達する。この資金は、製品ラインナップを拡充するための開発や、サービス事業の展開に向けた開発に充てる考えである。

 ロボットスーツHALに関しては、国際安全規格の認証を取得したり、欧州で医療機器の認証を取得したりするなど、本格的な市場展開への準備を進めてきた(関連記事2同3)。日本では既に400体以上が利用されており、欧州でも約50体が利用されているという。ロボットスーツHALによる治療に労災保険の適用が開始されたドイツでは、既に13の病院への導入が決定した(同4)。

 日本では、2013年春に始まった神経系難病疾患患者を対象とする治験が2014年夏に終了する予定。米国については、FDAへの申請に向けた手続きを近く始める考えだ。

 加えて今後、肘や膝など特定の部位だけに装着できるロボットスーツや、子供が装着できるタイプの開発を進めるという。いずれは「衣服と一体化できるような技術に育てたい」(山海氏)とした。

 売上高は「2013年度は前年比1.6倍となり、2014年度は同3~4倍になる見通し。2014年度には営業損益をブレークイーブンに持っていけるだろう」(山海氏)。創業以来の累計損失は40億~50億円に達しているものの、これまでは規格化の認証プロセスなどへの支出が多かったとして、2014年度以降に解消できるとの見方を示した。