閉会式での会長挨拶。会期中1万5000人以上が参加した
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 第78回日本循環器学会学術集会(2014年3月21~23日)のシンポジウム「ゲノム科学の新展開」では、東京大学 医科学研究所ヒトゲノム解析センター 教授の宮野悟氏が講演した(関連記事)。同氏が訴えかけたのは、大規模なゲノム解析に必要な計算リソースが不足していることだ。

 ゲノム解析には膨大な計算リソースが求められる。例えば東大 ヒトゲノム解析センターでは225TFLOPSの演算能力を持つスーパーコンピューターを利用しており、これは医学・生命科学分野では日本最大規模のシステムだという。演算能力はパソコン1万1000台分に相当し、ストレージ容量(4.4P(ペタ)バイト)は100GバイトのHDDで4万4000台分に当たる。これでも演算能力やストレージ容量は不十分とし、「演算能力は1PFLOPS、ストレージは100Pバイトがほしい」(宮野氏)と話した。

 ゲノム解析にスパコンを使う場合、特徴的なのは入力ジョブ数の多さだという。東大 ヒトゲノム解析センターに設置したスパコンの入力ジョブ数は年間23億4100万に達する。これは、同大に別の用途で設置した、演算能力1PFLOPS超のスパコンの入力ジョブ数の約5000倍に当たるという。

 この点では、理化学研究所と富士通が共同開発したスパコン「京」も大規模ゲノム解析には十分ではないと宮野氏は話した。演算速度は十分に速いものの、入力可能なジョブ数が少なく、ジョブ入力に容易に1週間以上を要してしまうためという。

 東大 ヒトゲノム解析センターのスパコンは、2015年に新システムへ移行する。東大 キャンパス内では電力が1MW/hまでしか使えず、システム構築予算も30%削減される予定であるため、計算リソースはますます苦しくなる方向だと宮野氏は訴えた。