開発技術について発表する豊嶋氏
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息を吹きかけて測定
息を吹きかけて測定
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脂肪燃焼量と相関するとされるアセトン濃度の計測値は1.1ppm。昼食直前の時間帯だったためか、平均値よりやや高い。
脂肪燃焼量と相関するとされるアセトン濃度の計測値は1.1ppm。昼食直前の時間帯だったためか、平均値よりやや高い。
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半導体レーザーとガス分析のノウハウを融合
半導体レーザーとガス分析のノウハウを融合
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量子カスケードレーザーを搭載し、検出感度を向上
量子カスケードレーザーを搭載し、検出感度を向上
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さまざまなガス種に対応可能

 今回の装置は、レーザー光源を入れ替えるだけでさまざまなガス種の分析に使えることが大きな特徴だ。東芝では既に、アセトンとメタン、アセトアルデヒドを検出できることを確認済み。このうちアセトンは肥満や糖尿病の指標となる脂肪酸代謝(燃焼量)と相関があり、メタンは腸内細菌代謝、アセトアルデヒドはアルコール代謝と相関がある。すなわち、これらのガスの含有量を測ることで、“脂肪の燃焼しやすさ”や“二日酔い”など、身体の状態を把握できるというわけだ。今後、喫煙と相関がある一酸化炭素や、ぜん息に関係する一酸化窒素、ピロリ菌と関係する13C二酸化炭素などを測定できることを実証したい考え。

 事業化に向けては、まずはレーザー光源を入れ替えるだけで複数のガス種に対応できる装置を2015年度内に市場投入する計画だ。設置面積はA3サイズ、重量は約25kgで、価格は1000万円超となる見通し。並行して、特定のガス種の分析に使う専用装置を、実効性の検証を進めつつ市場投入する計画という。専用装置は重量を12kg前後、価格を100万円未満に抑えたい考え。「薬事認証を取る必要が出てきた場合には、そのための手続きも進める」(豊嶋氏)としている。

まずはスポーツ分野に焦点

 東芝では専用装置の開発に向けて、呼気中のアセトン濃度と脂肪燃焼量の相関を調べる検証実験を、2014年4月から早稲田大学スポーツ科学学術院 教授の村岡功氏の研究グループと共同で進める。実効性を検証でき次第、脂肪代謝モニター装置として、スポーツクラブなどスポーツ生理学・運動学分野に向けて販売を開始する計画だ。東芝社内の予備実験では、アセトン濃度の個人差が大きいことや日中変動があることなどを確認できた。呼気中のアセトン濃度の平均値は0.7ppm、ばらつき(σ値)は±0.2ppmだった。

 呼気は、病気やその予兆を検出するための生体サンプルとしても注目を集めている。ただし、この点について東芝の見方は慎重だ。今回の装置を「単独で病気(やその予兆)の診断に使うことは、少なくとも近い将来には難しい。呼気だけでなく、さまざまな生体情報と組み合わせて診断することが欠かせない」(豊嶋氏)とする。