200℃の動作温度、1200Vの耐圧を実現したSiC製パワーMOSFET「SCT30N120」のパッケージ写真(出所:伊仏STマイクロエレクトロニクス社)
200℃の動作温度、1200Vの耐圧を実現したSiC製パワーMOSFET「SCT30N120」のパッケージ写真(出所:伊仏STマイクロエレクトロニクス社)
[画像のクリックで拡大表示]

 大手パワー半導体メーカーの伊仏STマイクロエレクトロニクス社は3月、次世代半導体素子であるSiC(炭化ケイ素)を採用したパワーMOSFET(金属酸化物半導体型の電界効果トランジスタ)「SCT30N120」を販売すると発表した。動作温度は、業界最高レベルの200℃、耐圧は1200Vを実現した。太陽光発電向けのパワーコンディショナー(PCS)などへの採用を目指す。

 SiCをパワー半導体素子に使う利点は、従来のシリコン(Si)によるパワー半導体素子に比べて、エネルギー損失を抑制できることにある。STでは、少なくとも50%低減できるとしている。

 今回のSiC製の高耐圧のパワーMOSFETは、太陽光発電用のPCSにおいて、従来のシリコン製のIGBT(絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ)の代わりに使う。太陽光パネルが発電した直流の電流を、高電圧の交流の電流に変換する役割を担う。

 シリコン製のIGBTに比べて、専用の駆動回路を使わずに変換できること、より高い周波数で動作できるために、PCSのパワーユニット内の他の部品を小型化できる利点がある。これによって、PCSのパワーユニットの低コスト化や小型化、変換効率の向上を実現できる。

 現在、サンプル出荷中で、6月に量産を開始する予定。パッケージは、温度特性の向上を目的に独自開発したHiP247パッケージを採用した。価格は1000個購入時に約35米ドル。

 SiCを半導体素子に使ったパワー半導体製品は、国内外のメーカーが開発を進めている。今後、価格が下がってくれば、モーターを制御するインバーターのほか、太陽光発電用のPCSにも本格的に採用が進む可能性がある。