日経テクノロジーオンライン

世界初の「動体追跡+スポットスキャニング」、北大病院陽子線治療センターの竣工披露式・開所式が開催

北海道大学と日立製作所の共同開発で実現

2014/03/18 08:00
小谷 卓也=日経デジタルヘルス

 北海道大学と日立製作所は2014年3月17日、北海道大学病院陽子線治療センターの竣工披露式・開所式を開催した。同センターは、国家プロジェクト「最先端研究開発支援プログラム(FIRST)」の採択を2010年に受け、両者が共同で開発を進めてきた新型の陽子線がん治療システム「PROBEAT-RT」を導入した施設である(関連記事)

北海道大学病院陽子線治療センターの外観
[画像のクリックで拡大表示]
竣工披露式でのテープカットの様子
[画像のクリックで拡大表示]

中心研究者の白土氏が抱負

 竣工披露式・開所式には、FIRSTプログラムの中心研究者で、北海道大学大学院 医学研究科 教授の白土博樹氏が出席。「この新たな装置によるがん治療を待っている患者がいる。今までの治療法では難しかったがん治療を、まずはこの地で実施していき、今後は世界にも発信していきたい」と語った。

 第1号の患者は、2014年3月19日に治療する予定。「個人情報のため詳細は明かせないが、骨軟部組織腫瘍の患者」(白土氏)だという。

北海道大学大学院 医学研究科 教授の白土博樹氏
[画像のクリックで拡大表示]
日立製作所 取締役会長の川村隆氏
[画像のクリックで拡大表示]

 竣工披露式・開所式には、治療装置を共同開発した日立製作所から同社 取締役会長の川村隆氏も出席。「我々は今、ヘルスケア事業を強化する方針を打ち出している。2014年3月1日には日立メディコのTOBを完了した他、同年4月にはヘルスケアグループを新設する。この陽子線がん治療装置の事業もその大きな柱となるものだ」と述べた(関連記事)

薬事承認申請中

 PROBEAT-RTは、北海道大学の「動体追跡照射技術」と、日立製作所の「スポットスキャニング照射技術」を世界で初めて組み合わせた装置だ。

動体追跡照射技術とスポットスキャニング照射技術を融合
[画像のクリックで拡大表示]
北海道大学と日立製作所の関係者
[画像のクリックで拡大表示]

 動体追跡照射技術は、肺や肝臓など、呼吸で位置が変動する腫瘍に対して、精度よく陽子線を照射する技術。スポットスキャニング照射技術は、陽子線のビームを従来のように拡散させるのではなく細い状態のまま用い、照射と一時停止を高速で繰り返しながら順次位置を変えて陽子線を照射する技術。複雑な形状をした腫瘍でも、その形状に合わせて高い精度で陽子線を照射することができる。

 今回の装置は、照射方式をスポットスキャニング照射方式のみに特化したことで、ガントリーや照射ノズル、加速器を小型化したのも特徴である。

PROBEAT-RTの外観
[画像のクリックで拡大表示]
陽子ライナックやシンクロトロン(加速器)
[画像のクリックで拡大表示]

 北海道大学病院陽子線治療センターでは、まずはスポットスキャニング照射技術を適用した治療を行いながら、動体追跡照射技術を組み合わせた治療システムの早期実現を図る考え。動体追跡照射技術とスポットスキャニング照射技術を組み合わせた治療システムについては、薬事法の製造販売承認を申請中で、2014年度上期中の承認取得および治療開始を目指す。